その名も「ハチワンダイバー」。将棋の盤が9×9で81マスなので「ハチワン」、何故ダイバーなのかは漫画を読んでみてください(そこまで言うとネタばれっぽくなる)。
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<br />コマの見せ方や、設定がものすごく面白いです。主人公は最初に挫折を味わいその後、真剣師と呼ばれる裏将棋?の世界のプロを本気で目指そうとします。また勝負のシーンはほぼ全て大ゴマで描かれており迫力が伝わってきます。将棋のルールや戦略もある程度説明されているので、誰でも読めると思います。
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<br />ノリは前作のエアマスターと似ているところもあります。ほんとに熱い将棋漫画です。
<br />それと絵の感じがエアマスターより柔らかくなっている気がします(メイドさんの描き方も意識して変えている?)
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<br />現在も週間ヤングジャンプで連載中の作品。
「メイド」「将棋」というと今流行の萌えオタク系かと早合点しそうになりますが、
<br />この作品は180度違います。一言でいうと「燃え」系です!
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<br />作者の柴田ヨクサル氏は隔週の雑誌から、この作品が掲載されているヤングジャンプに移籍してきたばかりであり、そのせいか週刊連載のペースに合わせるために前作以上に大ゴマ、大文字が多用されます。しかし、それが作品の品質を損ねるのではなくむしろ迫力を増す演出として効果的に表れているところから作者の漫画家としての頭の良さが伺えます。
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<br />奨励会崩れの主人公が賭け将棋を生業とする真剣師として「ハチワンダイバー」の名を
<br />名乗って強敵と戦っていくっていうあらすじですが、まだ一巻ということもありこれから
<br />どうなるかまったく分からないスリルのある展開に目が離せません。
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<br />将棋が分からなくてもまったく問題がなく楽しめる良作です。ぜひご購入を、おすすめです。
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<br /> プロ棋士への夢やぶれ今は「真剣師」として賭け将棋で小銭をかせぐ主人公・菅田が「アキバの受け師」となのる女真剣師にであうことで、表の将棋界とは異なる顔をもつ「真剣師」の世界に潜っていくというのがストーリーの大枠です。
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<br /> 主人公・菅田の社会不適応者っぷりは、ギャグとしても独自のセンスがあってとてもよいのですが、ギャグ要素が勝負におけるカッコよさをみじんも損なわないのがまたすばらしいです(菅田がみずからを「ハチワンダイバー」となのるシーンは背筋が寒くなるほどカッコよい)。「将棋しかない」人間の熱量と狂気と滑稽さを不可分なものとしてまるごとみせるキャラクター描写は本当によくて、シニカルと熱血がまじりあったテイストはまさにヨクサル節です。
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<br /> 「ハチワンダイバー」は将棋漫画としては、メイド真剣師という異化効果をもたらす要素をとりいれる、将棋の技術的な部分を語らないという戦略でルールを知らない読者にもフレンドリーな仕様になっています(このへんは近年ヒットした囲碁漫画「ヒカルの碁」と共通した点です)。しかしそれでいて(私のような)将棋を知らない読者にも勝負の息づかいというか、凄みは十分に伝わってきます。それは作者が将棋のゲームとしてのディテールを描くことを放棄したかわりに、キャラクターたちの真剣師としての誇りを、勝利に対する渇望を、勝負に対峙する恐怖をそして将棋に潜り込んでいく恍惚を高いテンションで徹底的に表現しているからにほかなりません。