実は私は最初は松本大洋先生の絵があまり得意ではありませんでした。<br />しかし、1巻2巻と読み進めるうちに、その世界に引き込まれ、3巻を読み終えた頃にはすっかり松本大洋ワールドにハマっていました。<br />平べったい紙から、登場人物の感情はもちろん、宝町や人物がまとっている空気や、きいているであろう音までもが伝わってきて、その感覚が何度読んでも消えないのです。<br />話もセリフも間の取り方もすべてが私の求めていたもので、2巻終わりから3巻ラストまでを思い出すたび泣きそうになる私がいます。<br />なぜ泣きそうになるのか…。その原因はクロの寂しさか、シロの強さか。はたまたまわりの人間の気高さ・人間味、大人の身勝手さ…どれなのかはわかりませんが、でもきっと、すべてがそうなのかもしれません。<br /><br />今となってはありふれた話・テーマなのかもしれませんが、10年前にはきっとまだ新鮮な方だったのではと思います。でも今でもまったく色褪せていない、本当に魅力的な漫画です。
人は誰も完璧でない。だから皆自分に足りない何かを他人の中に探す。そして、それに惹かれる人もいれば、妬む人もいる。シロとクロ、お互いに足りないモノを自覚し、そして支えあっている。私はそれを感じ単純に幸福なことだと思う。
暗すぎず、ユーモアもあり、愛もあり、まとまりもいい。
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<br />この漫画では、愛した街が変わってしまうこと、
<br />街が変わってしまう寂しさ、
<br />街にはびこる寂しさを描いたものだと思うのですが、
<br />その街。
<br />街はすべて定規を使わずフリーハンドで描かれており、
<br />クロが読んでる漫画だとか、壁の落書きなどもしっかり描いており、
<br />作者は街に愛を込めて描いたんだなあと伝わって来ます。
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<br />主人公二人の絆、ヤクザの上司と部下の絆、
<br />街と住民の絆、
<br />絆への不信感などが描かれてるんですが、
<br />決してそれを、絶望で終わらせたりしない。
<br />そこがいい。