シリーズ第8巻の本書は、室町時代の文化(能・将棋・茶道など)、および戦国時代に向かいつつある時期の、室町幕府のぐらつきを中心に説いていきます。<p>シリーズ全体を通して言えることですが、人が歴史を動かしてきた、という事実を改めて認識させられます。その時そのときの社会情勢、経済情勢にあわせて、各社会集団(この巻で言えば、貴族、武士、農民など)の利害がぶつかり合い、新しい社会システムが組みあがっていく過程が克明に描かれます。そして、各集団の相対的立場は、リーダーのエゴ・ビジョン・組織力によって、相対的に強くもなれば弱くもなる、そんな現実が見えてきます。つまり、自分の社会的ポジションは、意識的にせよ無意識にせよ、自動的に付与されるものではなく、他の社会集団との激しい相克のうちに勝ち取るもので、そのせめぎ合いこそが歴史に他ならない、そんなメッセージを受け取りました。日本史はつまらない、と思っている人にもお勧めできるシリーズです。
室町文化、一揆の真実が分かります。<br>「う~ん、そうだったのか。」と思わず声が出ます。<br>まさに目から鱗です。一気に読んでしまいました。<br>歴史好きにはたまりません。<br>そうでない人も、これを読めばきっと歴史好きになります。
「懶惰の帝王」足利義政編から室町文化の光と影編まで。<p>ヨーロッパでも“中世暗黒時代”といいますが、日本の室町時代も、天魔王・義教が没した後はまさに混沌の時代が続きます。<br>その集積が応仁の乱ですが、それに到る複雑というか、「なんでそうなるの?」と呆れるくらいの勢力争いが詳しく書かれています。<p>このあたりも高校の日本史をしっかり補完してくれるという意味でも歴史の深さを知らせてくれる良書(良巻)です。<p>室町文化についてでは、日本独自の文化の代表ともいえる将棋について項を割いており、奇しくもなのか、参考にしたのかどうか分かりませんが明石散人『謎ジパング』で触れているのと同じく、将棋≠戦争ゲーム論という同じ結論に達しているのが面白いところです。<br>内容はさすがというかこちらのほうが丁寧。