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目をみはる伊藤若冲の『動植綵絵』 ( 狩野 博幸 )

2000年8月20日リリース。合衆国中部に住む一技術者と自称するジョー・D・プライス氏の眼力が今の伊藤若冲評価の始まりであるというのは識者の一致するところではないかと思う。氏が初めて日本を訪れた昭和38年当時伊藤若冲は日本人批評家たちには全く評価されていなかった。しかし、ジョー・D・プライス氏は己の眼力を信じ収集に努めた。昭和45年秋、京都御所の曝涼の折に『動植綵絵』三十幅が全てかけられた時、京都国立博物館の白畑よし氏の助力でこれを見ることが出来たプライス氏が男泣きに泣いたというのは有名な話だ。 <br /> <br />本書では静岡県立美術館所蔵の『樹花鳥獣図屏風』があまりに小さく残念だった。今や宇多田ヒカルのPVにまで登場するこの絵こそ伊藤若冲の代表作だと僕は思う。これが入ればほぼ満点。それでも手法・年譜など良くできていて素晴らしい。

 昔テレビで伊藤若冲の特集を見て好きになったにわかファンなので、若冲の美術史における位置づけや周辺作品には詳しくない。それでもずっと作品が記憶に残っているのは、彼の作品の中にある何かが強く見る者の心に訴えかけているに違いない。 <br /> <br /> 最初は、それがリアリズムにあるのかと思っていた。彼の描く鶏に使われている原色にあるのかと思っていた。 <br /> しかし、この作品集の絵と解説(この解説が良かった)を見て、若冲の作品に魅かれる理由が自分なりに理解できた。 <br /> <br /> 最大のヒントは、構図が非現実的なことだ。単なる写生画とは根本的に違っている。 <br /> 非現実な構図の中にリアリティーのある動植物が描かれているので、より一層幻想的なイメージが強くなっている。 <br /> また、リアリティーを持って我々に迫ってくる動植物でさえも、実物を見ないで描いたものもあるようだ。 <br /> 自分がリアリズムと錯覚していただけで、実は伊藤若冲の心の世界を見せられていたわけである。 <br /> <br /> 本書においては、絵そのものを紹介するとともに、絵から動植物だけを抜き出してアップにしたものも何点か掲載しているので、今述べたような点を強く意識することができる。 <br /> <br /> B5版程度の大きさなので、通勤時にも眺められるかと思っていたが、混雑していてなかなか難しい。そこで、作品集の中から特に気に入った部分をスキャンして、携帯の待ち受け画面に使用している。ちなみに最も気に入っているのは、「老松鸚鵡図」のオウムちゃんのアップである。 <br /> <br />

写真よりもリアルな、生物がそこにいる存在感。絵の中の生命。神業と言える精密さ。<br>若冲の絵の素晴らしさは生きとし生けるもの全てに対する思いやりが卓越した観察力となって細密な描写で表されている事だと思う。<br>美しい鳥や植物だけでなく、魚や貝殻、普通の人は嫌がるような小さな虫の1匹にまで生命の息吹きが吹き込まれ、絵の中に存在するのだ。<p>彼が肉用に売られていた雀を可哀想に思い、全て買い取って庭に放してやった話にも頷ける。<p>と、まあ、若冲の素晴らしさについてはここで語るよりも実際に見てもらうのが1番なのだが、私が言える事はこの本はそんな若冲の虜になってしまった人達にオススメな本だという事である。<p>若冲の本も色々ありますが(例えばとにかく豪華なもの、手頃で携帯性に優れたもの、おしゃれな装丁のもの)これは「若冲の本が欲しいのだけどどれを買ってみたらいいか分からない」人が最初に手に取るにはオススメの1冊。<br>収録されている作品数も多いし、解説も素晴らしい。そして値段も良心的。

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