ハンニバルもやっつけて、カルタゴも根絶したことだし、平和だな・・・。と思っていたローマに、
<br />内部から問題が噴出してくる。今作は、成功をおさめた後のローマの迷走を描く。
<br />まず、グラックス兄弟について述べられる。恵まれた境遇に生まれ育った兄弟だが、まず兄が
<br />護民官になり、市民、平民のため改革を行おうと次々に法案を提出・成立させていく。
<br />都市に流入していた失業者を減らし、拡大していた格差を是正し、社会を安定させようとしたのだ。
<br />しかし、改革をすすめるうち、元老院の反発などもでてくる。市民には人気を博しつつ、反対派も出現し、
<br />元老院も難しい顔をするなか、改革続行・護民官再選を目指す兄は、反対派に斃れ、
<br />弟もそののち護民官となりやはりたくさんの改革をすすめていくのだが・・・。
<br />後半では、マリウスとスッラについて描く。名門貴族の出ではないマリウスは、軍団たたきあげの人材として、
<br />侵入してきたゲルマン人を追い返すなどの手柄をたて、コンスルにまでのぼりつめ、ローマ軍団を
<br />なんと徴兵制ではなく志願制にするなどの大改革を行う。
<br />高等教育を受けていないという劣等感と、軍団たたきあげの優れた司令官としての資質、手柄がせめぎあう。
<br />そして、ローマ市民権が以前よりおいしいものとなってきたため、内乱が勃発。ローマも危機に陥るが・・・
<br />最後は、怖いイメージがあるスッラが登場。貴族の出ながら戸建に住めず、あまり恵まれていなかった彼だが、
<br />軍団の運営などで功績をあげていく・・・
<br />いったん成功した国家を改革していくさまが、現代にも参考になる一冊。
ハンニバル討伐後のローマの繁栄の継続は、そんなに簡単なものではなかった!!
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<br />ローマ人の紆余曲折は、勝者にしてなお混迷を深め、やがてローマがローマを制圧すると言う、ローマ史上初の争いを誘発するのだ。
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<br />リズムある文体の裏に見え隠れする名文句は、読むものを骨太の感動へと誘う。どんな自己啓発書、どんなビジネス書にも劣らないローマを舞台に活躍した名将の生きざま。
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<br />『いかなる強大国といえども、長期にわたって安泰でありつづけることはできない。国外には敵をもたなくなっても、国内に敵をもつようになる。
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<br />外からの敵は寄せつけない頑健そのものの肉体でも、肉体の成長に従いていけなかったがゆえの内臓疾患に、苦しまされることがあるのと似ている。』
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<br />この言葉が本書を端的に語っている。
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前半はハンニバルを破った名将スキピオの孫という名門に生まれながら非業の死をとげるグラックス兄弟をめぐる政治闘争、後半はマリウスとスッラというこれまで日本では一般では知られていなかった2人の名将の登場とローマを二分しての「同盟者戦役」という構成。ハンニバル戦記に続き歴史好きにはたまらない展開です。