内外に問題を抱えるローマの混沌は、スッラ、ポンペイウスの出現を経てもいまだ改善されない。しかしながら、そこここに新改革を掲げて、何とかこの困難を乗り切ってゆく。
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<br />昨日の友は今日の敵、昨日の恩師は今日の仇討ち相手と、ローマに連綿と続く覇権争いとその改革は、共和制の限界を示し、いよいよガイウス・ユリウス・カエサルの出現をみるのである。
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<br />ローマの栄光までもう少し。稀代の天才の出現まで後もう少し。やがてみるローマの栄光へと続く道は、本書とともに嫌がおうにも高揚感を煽り立てる。
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前半は同盟者戦役に続き繰り広げられるマリウスとスッラの権力闘争とそれに乗じ勢力拡大を図るポントス王ミトリテダスの暗躍。後半は日本ではカエサルに負けた人物の印象が強いポンペイウスの活躍とスッラにも認められる才能を持ちながら後半生活躍出来ずに終わるルクルスの物語。上巻以上に歴史・戦記物好きにはたまらない展開です。ミトリテダスはライトノベルのアルスラーン戦記にそっくりな人物が出ています。昔の作品ですがこちらも戦記物が好きな方にはお勧めです。
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この巻はローマ人の物語の最高傑作に挙げたい。
<br />とにかく登場人物のキャラが立っている。
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<br />まずはスッラ。塩野さんはスッラをかなり高く評価しているため見てて気持ちがいい。ページ数が主役としては少なめ、とは思えないほどローマ人全編を通じて最も魅力的に書かれている人物の一人である
<br />そしてルクルス。ポンペイウスの章の中に吸収されてしまっているとは思えないほど精彩を放ってる。
<br />最後には英雄ポンペイウスの登場。カエサルの巻ではあまりいいとこがないがやはりライバルにふさわしかったのだろう。
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<br />カエサルの巻では役者が多いしメンバーも個性的ではあるがもうちょっと割かれているページ数が少ないと感じたりキケロもそうだが魅力的とまでは言えない。カエサルに文庫本で6巻を費やそうともこの一巻には忘れられない人物がいっぱいいるのだ。
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<br />多くの役者が出てき始め、そして内乱の様相も濃くなってくる。ついに佳境に入り始めたのだなと容易に感じられるし読みながらわくわくして行く。世界が広がっていく。そして帝政という収束への道がはるかに待っているのだ。