カエサル、アウグストゥスと言う二人のマーニュスが築いた礎の次に登場する、どちらかと言うと凡人扱いされている皇帝たちの物語。
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<br />この凡人たちにスポットライトを当て、今までの歴史家たちの彼らへの見解を正し、広大なローマ帝国を率いるための政治家たる資質を問いただした著者懇親の物語。
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<br />この17巻では、偉大な二人の先人には明らかに劣る政治家の資質を、第二代皇帝ティベリウスはいかにカバーし、いかに有権者に訴え、いかに生きたかが克明に綴られている。
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<br />ローマ皇帝史と言うと、アウグストゥスやハドリアヌス、コンスタンティウスにのみスポットライトが当てられてしまうが、実はティベリウスからネロへと続く問題児な凡人たち(著者の言葉を借りれば決してそうではないが)が、この広大な帝国の基盤を確固としたものにしたとも言えるのだ。
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<br />『何もしないことも政治のうち』と言う著者の言葉は耳が痛い。
カエサル、アウグストゥスと偉大な指導者のあとに続く皇帝達の話。<br>皇帝ひとりにつき文庫版だと約1冊です。<br>カエサルは6冊あった。アウグストゥスは3冊あった。<br>著者の思い入れか、それほど偉大だったのか。<br>私はひとり1冊分くらいのペースがいいと思う。長いと飽きるから。
前妻との別離により精神的には死んでしまっていたティベリウスが、アウグストゥスの死後、やるべきことをやった物語。<p> 長らく第一人者に頼り切る政体を経た元老院はすでに統治の技術を失っており、帝国の現状を把握する知性も、そして彼自身の誇りも、これ以上逃げることは許さなかった。最早死んでしまったも同然であるから、大抵のことには耐えられるティベリウス。その彼が、やりたいことをやり、欲しい物はすべて手にしていたゲルマニクスが死さえも手に入れたとき、どのような心境であったかは察するに余りある。嫉妬さえも、彼の誇りは許さなかったのだ。しかし、そのティベリウスにも限度というものがあった。<p> カプリへの「家出」という、限りなく優しい表現に微笑まずにはいられない。本人が聞けば、ため息で返事すればいい方。やるべきこともやりたいことも思う存分やったうえで、女に恨まれないという禿の女たらしならば……と思うのも無理はない。やればやるほど彼個人の望みとは離れ、帝権が確立してゆく。