どんなに豊かな才能に恵まれていても、ただそれだけでは一流にはなれない。世界に通用する芸術家が誕生する背景には、正しく導いてくれる師、それに応えて努力して努力して才能を磨き続ける本人の情熱、その才能を信じて助け合う家族の存在がある。
<br />著者もご主人も、子供たちも、ご両親も、皆が人への豊かな愛情をもって真剣に人生に向かい合っていて、本当に素晴らしい、というよりすごい。
<br />人間てここまでできるものなのか、と励みになる本です。
きっかけは毎週子供と楽しみに見ている「雪の女王」のテーマソングから芸術の第一線でご活躍されている3人を知り、どのように育てられたのだろうという興味をもちました。細かい経歴・ノウハウを知りたいという不純な気持ちもあったかもしれません。読み始めたら、家族を大切にするために必死で努力する母親の姿にただただ感動し、引き込まれました。母親の文子さん本人は勿論、ご両親、ご兄弟の優秀さ、ヴァイオリンもテレビで活躍されていた先生の友人が、文子さんの母親と知り合いだったこと、それはそれは一般人とはかけ離れた素晴らしいご一家ではありますが、確かにそれを鼻にかけるような文章はありません。譜面を少しずつ区切って母がカードに書き写し、達成度をグラフにし努力した初めてのヴァイオリンコンクール、ご両親の介護をしながら育児に奔走する様子、理屈でなく愛情とそれゆえにする努力により子育ては成り立ってゆく、愛情は心のミルク、そこを一番心へ訴えかけていただけました。この上ない程の素晴らしい家柄に勝る、母親としての愛情と努力において一流な方であると尊敬いたします。
千住明さんの曲が好きなことから始まり画家の博さん、バイオリニストの真理子さんを知り、3兄妹そろって一流の芸術家だなんて、どんなご両親のもとでどんなふうに彼らは育ったんだろう、となんとなく思ったことはありました。この本は偶然見つけました。みるみるうちに惹きこまれました。お母さんの子どもたちへの深い愛情、一緒にお遊びする時の機知に富んだ楽しい言動、人よりかなり遅れたスタートから始まる演奏会への出場や大学受験に命をもかけるほどの意気込みで自分自身をかける子どもたちとお母さん、そしてその言葉なしでは今現在の彼らの姿はなかったかもしれない程の穏やかだが素晴らしい助言・意見を与えるお父さん、家族の死に正面から家族全員で一生懸命向き合う姿など、すべてが心を打ち、気がつくと熱いものがこみあげていました。人間はこんなにも努力し頑張ることが出来、こんなにも深い愛情を持って人に接し、生きることが出来るんだなと、またそうでなくてはと改めて知らされた思いです。おそらくこの本は読む人が老若男女・子どもがいるいないに関わらず、ただ真っ直ぐに読む者の心をとらえ、読者自身と、その生き方をも見つめ直させてくれる…そんな気がしました。