今までの人生で数式(数学)が美しいと感じたことがあるでしょうか?おそらく、多くの人は数式に美しさを感じたことなど無いでしょう。それどころか、数式を見るのもウンザリという人が多いのではないだろうか?おそらく、それなりに数学に精通していない限り、数式を見て、美しいなどと感じることはないことでしょう。
<br />しかし、本書からならば、数学嫌いな人でも、「数学の美しさ」や「数学の神秘さ」を感じ取れるのではないだろうか?物語の中で、博士が数字の神秘を語るくだりは、つい引き込まれてしまいます。「この本を中学生の頃くらいに読んでいたら、もっと数学を勉強していたかもなぁ〜」なんて思いました。お勧めの一冊です。
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大げさな展開などなにも無いのだけど、静かに家政婦と雇い主という関係が始まり、子供がかかわり、ところどころに事件があり、静かに話が進められていて、終わりも暖かな余韻とともに静かに終わっている。
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<br />なんか、登場人物がとてもリアルでユニーク。そして彼らの交流がほんわかしてて、そこがじわじわじわじわと胸にくる。
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<br />数式って、こんなに興味深いものだったっけ?と、どこか昔に学校で習ったことのある定理を違った気持ちで読んでいた。 無味乾燥な数学が、とても面白くドラマティックに思えてくるのは著者の筆力の賜物ではないかな。
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<br />誰かに大切にされるって、こんなに素敵なことだったんだね、って改めて思う。
<br />静かに泣ける1冊です。
朝目覚めると、身体に貼り付けたメモから「自分が80分間の記憶しか持てない」ことを知らされて博士の一日は始まる。
<br />自分自身を縁取るバックボーンを、何一つ認識できない心細さとは如何なるものだろう。
<br />私たちは、所属する団体や会社、学歴、資格、人脈、過去の実績など自身を取り巻く多くの「後ろ盾」によって相対的評価されることに慣れている。
<br />ところが、ここに登場する博士は、今この瞬間に生きる自我のみが絶対的唯一の存在価値であり、それ以上でもそれ以下でもない。
<br />数学者である博士自身が、「全体との相対的比率を問題としない、絶対的な数値」を言う『絶対数』を体現しているようだが、しかし博士が最も愛する絶対数『素数』に「1」はあてはまらない。
<br />「絶対数」的博士も、独りではその存在に光は当たらない。博士を取り巻く「私」や「ルート」、「未亡人」などの人々が居て初めて博士たり得る、つまりは『素数』の人なのではないだろうか。
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<br />文中、「静けさ」を
<br />「あるべきものがあるべき場所に納まり、昔からずっと変わらずそうであったかのような、そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態」と表現する言葉が美しい。
<br />「ああ、静かだ」
<br />一日の終わりには、こうつぶやきたいものです。