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| 刺客―用心棒日月抄(じつげつしょう)
(
藤沢 周平
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用心棒日月抄シリーズの第3作です。今作では、現藩主の異母兄が藩主たらんとすべく、前作で又八郎を助けた佐知が統率する嗅足組壊滅に向け、5人の刺客を江戸に放ったことがわかり、異母兄と対立する藩上層部は、再び又八郎を江戸に向かわせます。もちろん藩存亡にかかわる隠密事だけに、又八郎は脱藩の形を取らされ、再び口入屋吉蔵の斡旋により、細谷たちと用心棒稼業で日銭を稼ぐ羽目になります。<br>第1、2作同様の用心棒稼業における細谷や吉蔵との交わりを描いたユーモア性と、刺客との対決におけるエンターテイメント性に加え、佐知との慕情が強く打ち出されているのが今作の特徴でしょうか。何れにしても、読み始めたら、止まらないシリーズです。 現代に生きる私たちには巡り会うことのむずかしい、誠の愛の姿を見ることが出来る作品。男臭さがにじみ出る主人公が「悪」を次々と倒すヒーロー小説でありながら、一方では生活感や時代の厳しさを、見事なまでの具体性をもって、再現した作者の筆力に圧倒される。素晴らしい時代小説である。
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