英国での1年間の研究留学する機会を得た日本人研究者の滞在記。日本の大学では雑務が多いため、集中して研究できると意気揚々としてやってきて、ケンブリッジやオックスフォードでの講演でのその分野の権威の前で恐れつつも立ち向かう様子、そして、英国の研究者との交流。
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<br />アメリカの大学滞在記"若き数学者のアメリカ"と読み比べるとなお興味深いです。イギリスとアメリカの違い、数学者として家長としてそれなりの自信を持った著者の行動。また、国家の品格につながる愛国心がところどころに書かれています。
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<br />なかなかイギリスの大学について書かれている著書はないので英国留学を考えている人、英国か米国か留学先を迷っている人は読んでみると良いかもしれません。
私も他のレビュアーの方と同じく、「若き数学者のアメリカ」
<br />が面白かったので、こちらも読み始めた口です。
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<br /> ケンブリッジでの生活、キャンパスでの教授の人間描写、次男
<br />のいじめから人種差別を考え、その対応etc.全編がエッセイなの
<br />でさくっと読めます。
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<br /> 第七章のレイシズムからが特に面白かったです。イギリスの階
<br />級社会の問題点を読む新聞から考察しているところなどは、なる
<br />ほどと思いました。
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<br /> 第12章のイギリスとイギリス人も興味深いです。ユーモアを
<br />大切にし努力をひけらかすことを嫌う国民性。私はイギリス人の
<br />友人はいませんが、なんとなく頭の中にイメージがわきあがりま
<br />した。
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<br /> こんなジョークが書いてありました。
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<br /> 無人島に男2人と女1人がたどり着いた。
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<br /> もし男がイタリア人だった場合、殺し合いが始まる。
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<br /> フランス人だった場合、一人は夫婦、一人は愛人として話がま
<br />とまる。
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<br /> イギリス人だった場合、口をきかないので何もおこらない。
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<br /> 日本人だった場合、東京本社にFAXで指示を仰ぐ。
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<br /> 世界各国で文化や国民性が違いますが、だからこそ面白いとも
<br />思います。旅行に行くのも新しい友人との出会いも、そのような
<br />「違い」を認めるところにあると思います。自分との異質性を認
<br />め、自己の見識を広める。読後にこんなことを感じました。
『若き数学者のアメリカ』が面白かったので、こちらも読んでみました。筆者の、時には過剰にも見える自意識や愛国心は健在で、共感したり、くすっと笑ったりしながらさくさく読めました。
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<br />私はイギリスに行ったことがないので、「ケンブリッジ」という土地や、第一線で活躍している研究者たちへの興味や憧れも抱きながら読み進めていったのですが、旅行だけでは体験できないような情報が満載で、面白かったです。
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<br />イギリスやイギリス人の良い面や悪い面を、「1人の日本人」の視点から時には熱く、時には冷静に見つめる筆者の想いがよく描かれていますので、渡英を考えていらっしゃる方には参考になると思います。