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心は孤独な数学者 ( 藤原 正彦 )

「天才の栄光と挫折―数学者列伝」でラマヌジャンの魅力にとりつかれた。同書にてラマヌジャンについてより詳しいとの記述をみかけたことが本書を購入したきっかけだ。 <br /> <br />しかし、私が知りたかったラマヌジャンの人物像や個人的エピソードについて「天才の栄光と挫折―数学者列伝」以上に詳しい記述は見られず、筆者のインド探訪録として厚みが増しているだけであった。 <br />ラマヌジャンが若くして他界したことを思えば仕方がないことなのかもしれない。 <br /> <br />ニュートンとハミルトンに至っては全くの同内容であった。 <br />従って「天才の栄光と挫折―数学者列伝」をお持ちの方は基本的に購入の必要はなく、読む順番を逆にするのが自然かもしれない。 <br /> <br />数学者の情緒豊かな側面を知ることができ、数学そのものに興味を持ついいきっかけになるであろう本である。小中高生にも是非読んでもらいたい良書だ。

とてもよく書けた作品です。よくこれだけ調べられたと感心します。これまで一般には知られなかった科学者の裏側の伝記を読んだという満足感がこの本にはあります。 <br />ただ一つだけ気になるのは、ニュートンの部分で、ニュートンが主役なのだからしかたがないのでしょうが、彼とまっこうから対立したライプニッツについて、特にライプニッツの科学哲学について著者は不勉強なのではないかと思えるふしがあります。著者は微積分成立をニュートンやライプニッツといった個々人ではなく、時代精神の産物と結論づけています。しかし、その当の時代精神という壁を乗り越えているのがライプニッツなのです。しかしニュートンにはそこにこそ限界があったのです。例えば「素数の音楽:マーカス・デュ・ソートイ著」という同じ数学者による本には、この事実がほんの少しですが述べられています。(P.180参照)  手前味噌でまた物理・数学、ましてやニュートン・ライプニッツが主なテーマの本ではありませんが、(「縄文人の能舞台」ー副題:神々の数学史 )という本でも歴史的かつ科学史的、特に東洋も含む世界的見地から両科学者の対立の真の意味がふれられています。日本とニュートンの関係を知りたい人にはおすすめですね。

 1995年の単行本の文庫化。かなり加筆がされているらしい。 <br /> ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンという3人の天才数学者を取り上げ、伝記+紀行文としてまとめたもの。 <br /> 3人は著者の憧れの人物らしい。なかでもラマヌジャンへの想いが強いようで、本書の2/3近くはラマヌジャンのことが書かれている。読んでみて、確かにすごい人物だとわかった。インドでの貧乏と宗教に縛られた生活から這い上がり、輝かしい業績を上げながら、やはりインドから抜け出せず惨めに死んでいく。壮絶で感動的な話だった。 <br /> 生家や大学など、3人の人物にゆかりのある場所を色々と訪れており、半分、紀行文のようになっているのも面白い。

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心は孤独な数学者名著『遙かなるケンブリッジ』は、藤原正彦の感性と古武士然とした立ち居振る舞いとを明晰な文章で伝えるものだった。この数学者はどこにいても常に日本人としての誇りを失わず、それでいて盲目的な愛国者にならないだけの冷めた目を併せ持つ稀有な人である。その著者が天才数学者3人、ニュートン、ハミルトン、そしてインドの神童ラマヌジャンの生き方をたどりつつ、彼らの苦悩に満ちた日々を愛情豊かな、それでいて決して一面的にならない冷静な筆致で跡づけて見せた。形の上では3人の評伝となっているのだが、それは単に彼らの生涯と業績を描いたというものではない。著者はそれぞれの人物が生きた場所を訪れ、彼らの在りし日をしのびつつ、同時にその天才としての業績、あるいはその性格的欠陥、懊悩(おうのう)の姿を見事に読者の前に示して見せた。特にインドが生んだ天才ラマヌジャンの苦闘を描いた章は、本書の中でも最も長く、そして最も波乱に富んだ軌跡を詳細に描き出したもので、数学のもつ芸術性、美学をこれほど豊かに示す例はほとんどほかに見出せないものでありながら、それ故この天才の不遇に思わず天を仰ぐしかないのである。本書は単に天才とは何か、天才を生み出すものは何だったのかを示すにとどまらず、たぐいまれな人物伝として高い評価を与えるべきものだろう。(小林章夫)
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