昨夜暫らくぶりに“星野道夫”さんの本が読みたいと思い、久方ぶりに帰ってきた。
<br />なんなんだろう。彼の本を読み返すのは1度や2度ではない。
<br />ただその度ごとに新鮮な衝撃を与えてくれ、必ず泣かされる。
<br />内容も知ってるはずなのに、である。
<br />彼の本に共通する一貫した根底にある流れは、圧倒的な“やさしさ”であることは、周知のとおり。
<br />それは、北風の寒い日に家の扉を開けた途端「お帰り」と言ってくれる母の声であり、
<br />肌寒さをかき消してくれる、フワッとした毛布であり、
<br />汗ばんだ体を冷ます一陣のそよ風のようなもの。誰もが知っている、懐かしい記憶。
<br />察するに、自然と人、アメリカ、アラスカと日本人である自分という明確な立場を、
<br />彼は意識してか無意識なのか常に精緻に嗅ぎ分けていて、そして誤りが無い。
<br />ぶれがない。
<br />的確に自分のいる場所であり、やっている事であり、おかれている立場をピンポイントで“わかっていた”。
<br />それに、(一般的な)入植者と違い、神道の流れをくむ、日本人である彼は自然を征服する相手と捉えず、
<br />自然の中で生かされている人間という立場をもきちんと“わかっていた”。
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<br />だからこそ彼の、大自然の営みに対する畏怖の念や、家族、隣人に対する温かい心遣いや、
<br />アラスカの歴史や未来、自然と人を考える姿を前にして、私たちは圧倒的な憧れと共感を嵐のように受けまくる。
<br />細胞が理性よりうんと先に反応してしまうのだろう、きっと。
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<br />私は、良本に出会うと読む前も、読んだ後も“ありがたい”という、思いで一杯になるが、
<br />星野さんの本も完全に出会えてよかった、“ありがとう”と感謝で一杯になる。
<br />星野さんを紹介してくれた義理の妹、ありがとう。
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著者星野道夫氏が他界されて今月でちょうど10年。それを先日まで知らず偶然にもこの本と出会い数日間で読み終えた日に、著者とも深い関連があるシシュマレフで環境侵食が進んでいるというニュースを耳にした。
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<br />この本は、アラスカという土地がどういう歴史を歩んできたのか、ということが凝縮された本だと言える。我々日本人とまったく無関係に思われる極北の地、アラスカ。しかし、21世紀に入り世界中があらゆる問題を抱えている中で、アラスカの歴史は私たちに様々なことを教えてくれ、勇気を与えてくれる、そんな1冊だと思う。
図書館でふと手にして読み始めたら、すぐに引き込まれてしまいました。著者に関しては、アラスカに詳しい写真家さん、というくらいの認識しかなかったのですが、その卓越した文章力に唖然!「本当に写真家の人が書いたの?作家じゃなくて?」という感じでした。<p> アメリカの経済社会に組み込まれ変貌しつつあるアラスカを愛し、そこで生きていく人々の心の機微がとても丁寧に描かれていて、繊細なのに圧倒される、とてもパワフルな本です。アラスカの自然の描写も美しく、写真も多く載っていて興味深く読みすすめられます。<p> アメリカ政府による核実験の実験地にされかかったアラスカの町を、その危険性に気付いた人々が救っていくというエピソードは、事実なだけに胸を打つものがあります。 なぜか読んでるあいだずっと胸に熱いものがこみ上げてくるので、少しずつ読み進めました。ぜひ大勢の人に読んでもらいたいです。装丁が黒いのは、きっと喪に服する意味なのでしょうね。亡くなられたのが残念です。