障がいを持つ人の性については過去に
<br />「無敵のハンディキャップ」や「こんな夜更けにバナナかよ」
<br />といった先行作品がかなりリアルな形で触れている。
<br />本作は性そのものに焦点を絞り、その意味ではいいところに目をつけたわけだが、
<br />どうも力量不足という感が否めない。読んでいても手応えを感じないのだ。
<br />取材された側の人々の人生を著者が背負いきれていないという一点ではなかろうか。
<br />評判の作品だから読んでみたものの、なぜこれほど高評価を受けているのか正直疑問だ。
<br />著者が若すぎるとかいうのではなく、そのテーマにどれほど作家生命を賭けたかという
<br />心意気のような気がする。
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たしかに本書には、問いかけはあっても答えはない。著者が、戸惑いながらも何らかの答えを出そうとしていた様子は窺えるが、結局、解答には至らない。
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<br />恥ずかしながら「障害者の性」について考えることを考えたことすらなかった私には、その著者の態度が「現段階」では正しいように感じられた。長年に渡って介助に携わっている人たちの中にも明確な答えが出せない人もいるデリケートな問題に、文献を読み多くの取材を行うことによって理解は深くなっているとはいえ、この問題についてはまだ「通りすがりの者(失礼な言い方だが)」に過ぎない著者に答えがだせないのは当然だと思う。
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<br />解説で、社会的問題を扱う作家のあるべき姿を『ものを書く人間は、ものを書くこと自体が運動(社会的運動)なのである。それをもって作家というのである。(以下略)』と定義している。他の部分は全くといっていい程同意できなかった解説だが、この点だけはその通りだと思う。このような社会的問題を扱った作家が、ボランティア活動をしなければならないわけではない。
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<br />しかし、この問題に関していえば、著者はこの「書くこと自体が運動(社会的運動)」という作家のあるべき姿をまっとうしていない。まだ自分なりの答えを見出していないからである。
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<br />現段階において、この問題をルポルタージュの形式で取り上げた本書は、その存在と難しさを多くの人々知らしめただけでも価値があるが、今後もこの問題を追い続けなければ、興味本位あるいは作家的野心のみでこの問題を扱ったに過ぎないと言われかねないのではなかろうか。
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<br />では、本書を読んだ読者の社会的運動は何だと問われたら、日々の生活に追われる私にはうな垂れることしかできないのであるが…。
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本書は、障害者の性について、
<br />地道な取材を重ねてまとめたものです。
<br />「障害者」、「性」という単独でもハードルの高いテーマにつき、
<br />生々しい用語、本音が満載されており、
<br />読み進めていて冷や汗が出てきました…。
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<br />とはいえ、本書は単なるノンフィクションを越えて、
<br />読者に単刀直入に疑問を投げかけてきます。
<br />すなわち、「お前は性愛とどう向き合っているのか」、と。
<br />同時に人権感覚や寛容の程度も問われます。
<br />著者は十分な答えを用意していませんが、
<br />ご自身の率直な感想や様々な人の意見を掲げることによって、
<br />考えるヒントはちりばめてくれています。
<br />一過性ではなく、長く記憶に残る作品です。
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<br />蛇足ですが、障害者の性について語ることが許されるのは、
<br />まだまだこの国と国民に財政的・精神的余裕がある証拠。
<br />何年先になってもこのようなテーマが問題にされる国であってほしいと思います。
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