四篇の短編集であるが、それぞれのテーマは、いみじくも統一感がある。
<br />共通しているのは、人の死を前向きに乗り越えるという事と、
<br />著者が後書きで述べている「許す、許される」という構造となっている点だ。
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<br />それぞれの短編が扱う死は、決して感傷を誘う材料ではない。
<br />むしろ、周囲がそれを乗り越えるという姿勢をみつめる、著者の温かい眼が、感傷を誘う。
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<br />表題作の緻密さも素晴らしいが、私は「まゆみのマーチ」に、特に感銘を受けた。
<br />もうすぐ死を迎える母の、我が子に対するかつての態度は、温かさに満ちている。
<br />現代進行中の様々な人生の一端を見る思いだ。
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<br />四篇すべての作品の水準は高い。
<br />単に温かさに満ちているというだけではなく、
<br />一定のテーマを鋭く描ききっている、読み応えのある作品集となっている。
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<br />短編と言っても、それぞれが文庫100ページ近くあり、
<br />どっぷりと浸る事が出来る。
そのタイトルのとおり、何かからの卒業をテーマとした4つの短編からなる作品です。
<br />4作とも、最後の最後、あと1ページや2ページというところで、泣かされました。
<br />それは、悲しいからではなく、何かあたたかさが満ちてきたからです。
<br />良かったね、ほんとに良かったね。
<br />そうやって登場人物に、最後には心の中でそっと語りかけたくなる、
<br />そんな作品集です。
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<br />「卒業」というのは、
<br />切ないけれど、辛いことだけれど、
<br />でもそれに向き合うことができたなら、とても前向きなことなんだ。
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<br />そんなふうに、この作品を読んで、思うことができました。
重松清と言えば(個人的に)短編集が好きで、「日曜の夕刊」、「小さき者へ」、「ビタミンF」なんてみんな良かった。それらの中で「卒業ホームラン」「団旗はためく下に」が好きなんだけど考えてみるとどちらも卒業がモチーフなんだよね。その重松清の直球ストレート「卒業」というタイトルの短編集。よくないわけないじゃん。泣けますよ。