この筆者のエッセイは本当におもしろい。何もないことをここまで面白く捉えれるものか、と思う。かといって、その感覚が常人離れしているふうでないのが、さらにいいところ。よくよく考えれば、誰もがふとそんなふうに思っていながら、何気なく意識のかなたへ葬ってしまっている、そんな感覚を文章にして記してくれている。
<br /> 変にこちらに考えさせるようなところもないから、色々と疲れていても読める。
各地を船で旅し、港町のうまいものを食べ、観光名所を皮肉り、スナックで騒ぎ・・・。直木賞作家!の紀行文とは程遠く、奥田さんらしさ満載のエッセイです。
<br />伊良部のモデルは、実は奥田さんでした、なんて思ってしまう。
<br />旅行となると、早く目的地に着かないかと、時間が気になるものですが、許されるなら船旅もいいかも
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思いついた遊びが、やる前はとってもおもしろそうと思ったのにやって
<br />みるとつまらなかったということはよくあること。最初の1回はそれな
<br />りに楽しいけれど、2回目以降はマンネリで。
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<br />というのが「湊に船で入り、港町を探索して紀行文を書」いた本書。
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<br />十数時間かけて船ででかけ、湊に着いたらそこの名物料理を食べる。
<br />夜はスナックで地元の女性と歓談。その人情に触れる、というもの。
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<br />わざわざ東京から名古屋に行き、そこから船で仙台に行くとか。ご苦労
<br />様と言いたくなる。
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<br />しかも佐渡には、一度東京から名古屋、名古屋から敦賀に行き、敦賀か
<br />ら新潟まで船。新潟から佐渡にはジェットフェリー。
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<br />これってだんだんネタがなくなってきたんだろうなと編集者に同情する。
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<br />それでも読ませるのは奥田英朗の脱力した筆力。ボーっとしたいときに
<br />読むとよろしいかと。
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<br />第一便 高知・土佐清水篇
<br />第二便 五島列島篇
<br />第三便 宮城・牡鹿半島篇
<br />第四便 韓国・釜山篇
<br />第五便 日本海篇
<br />第六便 稚内・礼文島篇
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