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累犯障害者 ( 山本 譲司 )

2006年に読んだ本では文句なし、一番の衝撃作だった。障害者×犯罪、二重のタブーに身を以て斬り込んでいった著者に拍手したい。 <br />地味だけどショックだったのは「第三章 生きがいはセックス――売春する知的障害女性たち」。これを読むと、風俗(売春)産業にはかなりの割合で知的障害者が従事しているのではないかと思われる。男性の方、思い当たりませんか。ものすごくサービスのいい、情熱的な風俗嬢の記憶ってありませんか。客は、通常の商取引だと思って買春している。資本主義倫理的には売り手と買い手はイーブンだから、そこには何の後ろめたさもない、と思っていたのに、実は相手は知的障害だった、としたら。 <br /> <br />本書が取り上げるのは、いま流行の格差社会論ですら掬われていない、どん底の人々である。自分と彼らとのあまりの距離に愕然とする。とくに「聴覚障害者が使っている手話は日本語逐語訳ではない。逐語訳手話は通じない」という指摘とか、改めて衝撃だった。日本語じゃない、んですよ! <br />だが、私たちは彼らとまったく違うのか?というと、そうではない。私たちも加齢とともに必ず何らかの障害を抱えるのである。私たちもいつか、この社会に居場所のない、排斥される、弱者になるのだ。必ず。金があれば居場所はあるかもしれないけれど、その金を失ったら誰もが弱者だ。そのとき、こんなはずじゃなかった、と泣くような社会でいいのだろうか。私たちが作るべきは、そんな社会なのだろうか。 <br /> <br />山本譲司さんの投げる球は、遠くまで届く力があると思います。力の続く限り投げ続けてほしいです。私は、受け取り続けたいと、強く思います。

触法障害者と呼ばれる「括り」があること自体私には衝撃だった。そして、本書でもっともクラクラとさせられるのは、その触法障害者と呼ばれる者たちの再犯率の高さである。彼らが語る再犯の動機を、誰も容易には否定できない。本書が取り上げる事例は、刑務所において矯正という目的が達せられていないことをまざまざと示している。ただし、著者はこの問題を、決して社会や制度への批判に終止するのではなく、立法や福祉活動への取り組みなど具体的な行動をライフワークとし解決しようとするところに、暗い気持ちで終わってしまいそうな内容に読んでいて救われる思いがした。「福祉」、「矯正」、「更生」という無批判で受け入れがちな言葉に対して、立ち止まって考えさせてくれる本である。 <br />

監獄経験を経歴のひとつに加えて物を書く作家は多いが、 <br />なぜ彼らはこれまでこの現実に向き合わなかったのだろうか。 <br />著者自身が「監獄」に入り、その目で現場を見たことは、 <br />日本にとり大きな収穫だった。 <br />どれも驚くべき事実ばかりだ。 <br />手話通訳の通じない裁判がなんの改善策も考えられずに行われていることに <br />この国の福祉政策の貧しさを見た。 <br />一件一件にさかれるページ数が少なく若干物足りない気がするが、 <br />今はこうした障害者による犯罪と刑務所の実態が白日の下に晒されたことに <br />本書の価値を見るべきだろう。 <br />

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