開けても開けても中から出てくるロシアの人形のようだった。自分が今どこにいるのかが分からなくなった。言葉には光があり、煌めきを残しているのだけれども、自分にはまだまだ理解できないままだ。
著者の「ドミノ」に近い実験的な作品だと思う。
<br />ドミノと違うのは、構成が複雑で一筋縄でいかないこと。
<br />私は、何度も読み返してしまった。
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<br />恩田陸という人は、引き出しがとっても多い人で、
<br />今作も、色んな引用とアイデアで満ちています。
<br />つまり、今作は恩田陸の頭の中を覗いているようなものに近く、
<br />その意味では、オブザーバー(?)として旅人二人(昌夫たち)が登場する場面で、
<br />霧・闇・トンネル・彼岸花などの非日常な小道具が使われているのは、
<br />著者の内世界に導く為の、確信犯的な部分がよく出ていると思う。
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<br />でもちょっと考えすぎな気もする。
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<br />只、こんな作品を発表出来るのは、恩田陸が絶好調な証拠で、
<br />だからこそ、今でなければ描けない作品だとは思う。
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不思議な本でした。
<br />自分では中に向って歩いているつもりなのに、いつのまにか外にでてしまうような。エッシャーの「階段」の不思議な絵のような物語でした。
<br />お話の中にお話があってさらにその中にお話が・・・わからない!
<br />読み終わったあとも???がグルグルとまわって、もう一度、もう一度と読み返したくなるような本でした。