これが書店に平積みになっていたときの、その強烈さといったら。
<br />「せ、先生、いったいどうしたんですか」とその題名およびロゴの大きさに私は驚き、次にとても心配になった。
<br />それは、ナンシー関に突然去られた時のように、「そのうち中島先生は書かなくなってしまうのではないか」「そしたら、あの文章がもう読めなくなってしまう」という、ちょっとした恐怖でもあった。
<br />とりあえず中島先生はまだ書いてくれるらしい。
<br />小谷野敦に「粗悪品を量産している」と悪口を言われたりする先生だが、どっこい、ミーハー読者の期待しているものこそ、そういうものだったりする。
<br />例えば「口論をしているうちに妻がいきなり首を絞めてきてそれと闘っているうちに」とか、「パーティーで山田詠美に会った」とか、そういう部分こそ楽しみにしているのである。「読んでよかった」と思えるのである。
<br />それにしても、先生の奥さんはクリスチャンなのに、急に夫の首を絞めるような強烈なキャラなんですかあ。いいですねー。哲学者たるもの夫婦喧嘩はここまでやらなくては、という先生なりの教えなのですね。とても感動しました。
<br />先生が言行一致の哲学者として生活しているからこそ、奥さんに首を絞められたり、路上ミュージシャンを連れて居酒屋へ行って支払いをさせられたり、息子の進路を案じたりしている日々の描写を私は楽しみにしています。
<br />特に、奥さんとの関係を物語る描写は優れていると以前から感心しています。もっと奥さん関係の分量を多くして欲しいのですが…。
さ迷える哲学者にして電気通信大学にお勤めの中島義道氏の小話集、
<br />全32話。『新潮45』に連載されたものをまとめたもの。
<br />(2002年1月号〜2004年9月号)
<br />
<br />以前この方の書かれるものを集中的に読みすぎてしまい、
<br />その反動でしばらく遠ざかっていましたが、
<br />久しぶりにタイトルに引かれて読みました。
<br />以下、一読した感想。
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<br />「へえ、学科長になったんだ」
<br />「無用塾閉鎖しちゃったんだ」
<br />「おいおい、水谷先生に相談するなよ・・・」
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<br />まえがきはなく、あとがきだけがあります。
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<br />この本を普通にすらすら読めてしまうのは、
<br />私が変わったのか、それとも中島氏が変わったのか。
<br />いずれにせよ、世間に属せずなじめず、
<br />マイノリティ的な生きにくさを感じている人向きの
<br />内容であることは変わりありません。
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<br />買って読んでみて、損したとも思わず、かと言って
<br />何がしか影響されたというわけでもなく。
<br />私には変にニュートラルな本です。
日本型社会の思考様式・行動様式とは明らかに異なる感覚を持つ著者。
<br />世界に類をみない特殊な異常性を持つこの国・この社会への違和感を実によく理解でき、おもしろくて一気に読み上げました。
<br />著者の言わんとする深部まで読み深めることもおもしろかったです。
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