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東京番外地 ( 森 達也 )

 最近廃墟がブームだ。  本書に書かれた場所にも、そのニオイが漂っている。 <br /> 拘置所・入管・精神病院・屠場・裁判所・皇居・山谷、どこも躍動感あふれる人間を感じさせる場所ではないという意味で、“生きながらえている廃墟”ともいえるのではないか。 <br /> そんな場所へ正式にアポを取らず、いわば行き当たりばったりで足を運び、「日本人が日本人をとても好きになりつつある」ことを「人は誰かを突出して好きになるときは、往々にしてその誰か以外の人に関心を失う傾向がある。あるいは、その相手の意向は無視して、独善的に愛を押し付けたくなることがある。」と説明するような著者流センスで味付けがされており、更には同様に色々と珍しいと思われる場所を紹介した『地球のはぐれ方(村上春樹他)』や『テリー伊藤の怖いもの見たさ探検隊』のように“遊び心”のエッセンスは含まれず、子どもが家の近所を探検するような無邪気でわくわくするような冒険心でなく、むしろ著書名と同じく『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』である彼のベースに反して、読後暗い気持ちにさせられる。 <br /> 私同様彼の著作好きな読者は、自分が自虐的に沈んだ気分を好んでいるのではないか?と思わずにはいられまい。 <br />

オウム真理教の取材・ドキュメント映画制作で知られる森達也さんの「東京・ヘンな場所・あまり行かない場所ルポ」。軽妙な筆致であっという間に読めます。 <br /> <br />小菅拘置所・歌舞伎町ストリップ・浅草「無縁仏」安置所・上北沢の精神病棟・山谷・屠場・・・確かに行きません。多く引用されている「あしたのジョー」の例えも然りなのですが、場所場所のルポのユーモラスな筆致の端々に「虚無的」と言いますか、「死」を匂わせるものを感じました。 <br /> <br />勿論、大袈裟・大上段な構えはないのですが、単なる奇譚探しツアーでなく「生きる」とは?人生とは?という視点で、忌避される場所・敬遠される場所は何故「忌避」「敬遠」されてきたのかを著者は自問し、かつ読者にも問うているような。なかなか面白い。

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