「100年の孤独」って、そんなのありえるのか?と思える、しかもSFチックなタイトルが魅力的です。また、この作品を読んで、現在世界で起こっているあれこれを考えるというのではなく、1つの小さな村に吹きだまった一族の孤独感を感じるための本です。
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<br /> ストーリー自体を読んだ限りでとらえれば、ラテンアメリカ版「ダイナスティ(米テレビドラマ)」か、「華麗なる一族(山崎豊子)」かしらと思います。でも、もっと貧乏くさくってほこりぽくって陰鬱な、とある開拓村を作った一族の栄枯盛衰の物語です。そもそもこの開拓も壮大な目的のもとに…というより、ある男女の駆け落ちの果ての妥協点だったり、世の中(もちろんこの開拓村も)はそれなりに動いているのに、数多い一族の中にはまったくそれとは異質のモノが流れ込んできてよどんでしまうといった暑っ苦しい陰湿さが強烈でした。登場人物の関連も強烈にわかりにくく、さらに巻末の解説によれば「42の矛盾と6つの重大な誤りがある」と著者が述べているらしいのですが、「まぁ、この濃い物語にはこの分かりにくさがいいのよね」と思える、珍しい読後感でした。
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<br /> ただ、今回の表紙よりも、99年版の表紙のほうがこの一族の中の複雑にからまり、閉ざされた状態を端的に表しているような気がするのと、巻頭の系図は不可欠ながらもやや結末が見えてしまう感があるので、一工夫を望みます。少し惜しい気もしますが、合わせて星ひとつ引きました。
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「ブエンディーア一族」をめぐる栄枯盛衰と愛と悲劇の歴史を綴った物語…なんて言ってしまうとドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」のような物語と思ってしまいそうだが、はるかに複雑でプロットも錯綜している。一読しただけでは「感じる」ことすらできないかもしれない。
<br /> かなり体力と根気が必要な一冊であるが、読み終わった後、虚脱しつつもなにか大きなものに圧倒されていることに気付く。
<br /> 「…また百年の孤独を運命づけられた家系は二度と地上に出現する機会を持ちえぬため、そこに記されていることの一切は、過去と未来を問わず、永遠に反復の可能性はない…」
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