この本の内容は、宇宙論の歴史です。
<br />今まで私は、宇宙論の歴史を断片的にしか知りませんでしたが、この本により体系的に理解できました。
<br />また、適切な図や巧みな文章、本の内容の構成などこの作者の良い面が前面に押し出されています。
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<br />人によっては、既に知っていることばかりという人も居られるかと思いますが、そんな方にも復習(?)がてら読んで損は無い本だと思いました。
これまでにも多くの書籍がビッグバンを題材として取り上げ、様々な角度から論じているが、本書はいかにビッグバンを解説しているだろうか。上下巻を読んだ感想としては、特別新鮮な驚きはなかったというのが正直なところだ。確かに筆者の筆力は素晴らしく話には引き込まれるし、今まであまり語られていなかったエピソードなど見所もあるのだが、いかんせん到着点が決まっているためにどうしても新味が薄いのだ。さらにビッグバンは殆ど「事実」として認められているもののまだその理論には不完全な部分も多く、最新の理論では主流?のインフレーション理論や、果てはVSL(光速変動理論)等も提示されており、そのあたりの展開がなかった事も不満が残った。
<br /> ただし最新の(まだ不確定な)理論が記述されていないのは、観測と理論の科学の両輪が揃った地点までを現代の科学的宇宙観として知って欲しいためだと語られており、これには納得させられた。人類の叡智がいかにしてビッグバンを解明したのか、その歴史を知るにあたっては本書は一読の価値ありと思う。
いい本にはよけいな言葉はいらない。ここまでわかりやすく、かつ人間味あふれた宇宙論はない。一種のミステリーを読み終えたような爽快感がある。基礎知識も必要なし、まさしく万人向け。読んで損なし。