うーん、前の二冊が神がかって面白かったので期待していたのだけれど、
<br />思った以上にあっさりしてました。前作までは「数学者」「暗号の解読者&作成者」達が、
<br />試行錯誤やひらめきにより問題を突破していくところに興奮と感動があったんですが、
<br />今回の研究者たちは基本的に当時最新の科学機器による「忍耐強い観測」と「データ収集」
<br />により業績を上げていくもので(というのも対象が手の届かない「大宇宙」なので
<br />仕方がないんですが)、宇宙論の発展=科学者たちの戦い、というよりは科学技術の
<br />発達の歴史じゃないのって思えてしまうのね。ハッブルが「自作の望遠鏡で大発見をした」
<br />というので無い以上、科学機器に関する記述も並行して述べていくべきかな、と。
<br />直径うんメートルのレンズが登場したところで、それがどういう素材や製作過程を経て
<br />生み出されたのか等は全く記述がありません。人間ドラマを通して描く、という今までの
<br />スタイルにこだわりすぎたのかなとも思います。
<br />文句ばっかですが値段相応の読み応えはありましたし、引き続き次回作が待ち遠しい作家で
<br />あることには変わりません。個人的には「暗号解読2」でもオッケーですw
「フェルマーの定理」「暗号解読」とサイモン・シンの本は、専門外の私でもとても楽しく読めた。
<br />ビッグバンについては類書がたくさん出ているので、何をいまさらと思っていて、最初はこの本を読んでいた。特に下巻に至るにつれ、冗長に感じて、飛ばし読みをしてしまった。
<br />しかし、2006年のノーベル賞は、まさにこの本の下巻の後半で大きく取り上げられているCOBEが受賞した。改めて読み返すと、ビッグバンというのは、今こそ旬というのがよく理解できた。
やはり物足りない内容だった。恒星の核反応や銀河形成に付いては、佐藤・松田『新装版 相対論的宇宙論』(ブルーバックス)が、ビッグバンに付いてはワインバーグ『宇宙創成はじめの三分間』が良い。ホイルが公平に解説した『宇宙物理学の最前線』(値段が高い)や、背景放射の観測ならスムート自身による『宇宙のしわ』が、インフレーションならグース自身の『なぜビッグバンは起こったのか』がある。そちらの方が迫力がある。
<br />出典のがわかるような文献表が無いのは不思議。ノンフィクションや個人の会話などがたくさん載っている本で、出典が明記されていないの不合格。訳書で省かれているのならば、言語道断。また、原著刊行から2年経っているのが惜しい。自然科学の翻訳は、少数の翻訳者に仕事が集中しているようだ。出版社や編集者自身が内容を理解せずに、安易に企画しているのだろう。