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渋滞学 ( 西成 活裕 )

この地球上におおすぎるのだ。 <br />特に東京渋谷あそこはわたくしは歩けない。 <br />人は暗黙のうちに相手を知り、どちらに歩くか察知する生き物であった <br />今はどうなっているのだ。ぶつかってきて、よけないのだ。 <br /> さて、人ごみをさけてわたくしが川の土手なんぞにすわりこんで <br />なーんにも考えないでいると。ブーブーブークラクションなのである。 <br /> <br /> ここもわたくしはいさせてくれそうにない。車が急ぐ。何故そーなったか <br />ひとだけでなくすべての者達がなにをそんなにいそがなくてはならないのか。 <br /> おもしろい本である。そして、きっと君達に何かのヒントをあたえてくれそうである。 <br />  ぜひ、ゆっくりできたら一読をお薦めしたい。

渋滞学というタイトルから想像して本書を手にした大方は車の渋滞を想像されたことだろう。 <br />かくいうわたしもその一人で、本書の装丁やタイトルのシンプルさとは裏腹に中身は大変に濃く有用な内容であった。 <br />車の渋滞についての記述もあるにはあるが、渋滞に出会しイライラを感じているものにとっては周知されている内容だ。それが論理的に語られているに過ぎないし、高速走行においての走行車線と追い越し車線の意味ははき違えている点などが見られる。 <br />それよりも重要な事は人口集中によるパニック状態に陥ったとき(明石歩道橋事故)の解消法など、読み進めていくと当然突き当たるいろいろな渋滞への興味。それらの興味をしだいに解消してくれるよう構成されている点はやはり科学者(物理学者)だと感じ得た。 <br />特に「世界は渋滞だらけ」が面白い。

寺田寅彦先生の随筆に「満員電車について」というのがあります。満員電車(バス)とそれに後続する電車(バス)の混雑具合の不均一が何故発生するのかについて、物理屋さん独特の観察&考察が述べられています。この話題を現代風にアレンジすると本書の「渋滞学」になる訳です。 <br />寺田先生が「電車の問題と良く似た問題が他にもある」といみじくも仰っているように、車・人・飛行機・インターネット・生物(アリ)・生体(例:神経細胞ネットワーク上の物質移動)など、「渋滞するモノ」で世の中が溢れています。一見、それらの間には全く共通点がないようですが、「ある経路に沿って流れる非ニュートン粒子(自己駆動粒子)」という立場で、セルオートマトンでモデル化すると、案外にも定量的に把握出来るモノだったんだなぁ、と納得させられます。渋滞の回避策まで示唆されている記述もあり、何だか得した気分ですね。 その他、豆知識や適度な脱線の記述もあり、楽しく読めました。この本を読み終えると、渋滞している事例に遭遇すると、セルオートマトンでモデル化して眺めてみたくなります。例えば「ド忘れ」という脳内現象に出くわした時、「脳細胞ネットワークの中で、情報の流れが今どんな風に【渋滞】を起こしてるのかな? その回避策はどうしたら良いのかな?」という具合に空想に耽るのも一興でありましょう。 <br />この本は複雑系科学が好きな読者には特にお薦めですね。多少の数式や専門用語(例:セルオートマトン)は出てきますが、本書を手に取ろうと決心した読者ならクリアできるレベルでしょう。複雑ネットワーク関係の本(バラバシ、ワッツの著作)や粉粒体の本(田口善弘「砂時計の七不思議」)と共にお薦めしたいですね。 <br />あと、交通機関システムの構築/管理している関係者の皆様にも是非本書を読んで頂きたいと思います。適度「ゆとり」がなぜ必要なのか、良く理解出来ます。過密ダイヤが原因の悲惨な事故を繰り返さないためにも。。。

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