武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 みんなこんな本を読んできた 武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新
 
 
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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 ( 磯田 道史 )

 この本は、加賀藩の猪山家の古文書(江戸末期から明治初期にかけて記録した家計簿や手紙)を読み解くことによって書かれたもの。猪山家は算術の得意な家であり、会計や事務のプロとして奉公することで、わずか年間40俵の給与から180石まで出世した家。そして、明治になってからは新政府で海軍で経理を勤めるようになる。 <br /> <br />(1) 出費の細部まで記述された家計簿の内容を上手に紹介することで、著者は、江戸時代の武士の暮らしぶりを生き生きと描き出している。 <br />(2) それなりに出世した猪山家であっても幕末の武士の暮らしは困窮を極めたこと、それに対して明治の海軍勤めは非常に給与的に恵まれたものであったことがよくわかる。 <br />(3) さらに、江戸時代は封建制といっても、武士と領地とのつながりは極めて希薄であり、このことが明治維新で封建制崩壊が容易に進んだ要因であることなど、歴史背景を読み解く鍵も提示されていたりする。 <br /> <br /> さまざまな面で、たいへんに興味深い本であり、たいくつせずに一気に読める。お勧めの本と言える。

 意味不明な数式の羅列から宇宙の始まりを熱く語る人もいれば、家計簿から当時に生きる人々の生活をありありと描き出す人もいる。やはりプロはすごいというのが感想。同時に自分の家計簿が流出したらどうなるのかと、空恐ろしくもなるが… <br /> 物語は、ある一組の家計簿が古書店の目録に載ったことからはじまる。時は幕末、加賀前田家に仕えた御用算者猪山直之が残した詳細な家計簿。日々の収入支出の記録は、当時の武士の生活を浮き彫りにするだけでなく、激動の明治維新の姿もありありと描き出してくれる。 <br /> 正直なところ読み始めは歴史小説の時代考証で語られているような内容に過ぎないのでは、と侮っていたが、それは誤った認識だった。研究者の執念というべきか、一つの資料を皮切りに、どんどん深く切り込んでいく。村田蔵六とのかかわりが出てくるところでは、ちょっとぞくぞくした。

武士の生活を家計簿からひも解く一冊です。 <br />新書でありながら、これだけの資料を丁寧に紹介している本は <br />そう見られるものではないと思います。 <br />著者が「面白い」と思っていることが、読者にも伝わってきます。 <br /> <br />ごく一般的な武士が御算用者に上り詰めていく努力が <br />家計簿から読み取れる、そこがこの本の醍醐味です。 <br /> <br />武士に興味のある方なら、一度は読んでみることをすすめます。 <br /> <br />

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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新&nbsp;&nbsp;&nbsp;東京・九段の靖国神社に立つ「大村益次郎」像の建立に力があったのは、加賀前田家の「猪山成之(しげゆき)」という一介のソロバン侍だった。幕末の天才軍略家と一藩の会計係の間に、どのような接点があったのか。「百姓」から軍略の才一つで新政府の兵部大輔に上りつめた大村と、ソロバン一つで下級武士から150石取りの上士にまで出世した成之の出会いは、いかにも明治維新を象徴する出来事だが、著者は偶然発見した「金沢藩猪山家文書」から、その背景をみごとに読み解いている。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;猪山家は代々、金沢藩の経理業務にたずさわる「御算用家」だった。能力がなくても先祖の威光で身分と報禄を保証される直参の上士と違い、「およそ武士からぬ技術」のソロバンで奉公する猪山家は陪臣身分で報禄も低かった。5代目市進が前田家の御算用者に採用されて直参となるが、それでも報禄は「切米40俵」に過ぎなかった。しかし、120万石の大藩ともなると、武士のドンブリ勘定で経営できるものではない。猪山家が歴代かけて磨きあげた「筆算」技術は藩経営の中核に地歩を占めていく。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;本書のタイトル「武士の家計簿」とは、6代綏之(やすゆき)から9代成之(しげゆき)までの4代にわたる出納帳のことである。日常の収支から冠婚葬祭の費用までを詳細に記録したものだが、ただの家計の書ではない。猪山家がそれと知らずに残したこの記録は、農工商の上に立つ武士の貧困と、能力が身分を凌駕していった幕末の実相を鮮明に見せてくれる。220ページ足らずとはいえ、壮大な歴史書である。(伊藤延司)
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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新