本書は自らの死生観を考える上で、一助となる良書だと思います。
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<br />この本は、死の文化や歴史に関して淡々と書かれた物であり、「死は全ての生物にあるありふれたもの」という筆者の思いが伝わってきます。
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<br />日本人の死生観に対する見解にはうなずかされることも多く、勉強になりました。
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<br />死は特別なものではない。日々どこにでもあるもの。
<br />しかし、死は自らの終わりを示す。その先は誰にもわからない。
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<br />この本を読んだあとの読感。
<br />「人は必ず死ぬし、生き物は必ず死ぬ。それは当たり前のことでありふれた事。しかし、死には様々な死があり、その時々に人々は死と向き合ってきた。死を恐れるばかりではつまらない。死をありふれたものとして認識し、冷静に死と向き合っていければ幸せなのではないかと思う。」
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私は、とある老人ホームの厨房で働いている調理師です。
<br />老人ホームということで、気候の変わり目で頻繁にお年寄りが亡くなります。私の視界の中にいたはずの人間が、忽然といなくなるという経験をもう3年続けています。現実の死は淡々としていて、何のドラマもありません。
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<br /> 習慣は恐ろしいもので、初めはお年寄りが亡くなったら、かなり落ち込んでいたものですが、今や慣れっこになってしまいました。「○○さん、昨日死んだって」 「ふ〜ん」 という具合です。馴染み過ぎると何の感慨も沸かないものです。私は冷たい人間です。感覚が麻痺したようです・・・
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<br /> 他人の死は馴染めても、さて、自分の死はどうでしょう。この本で改めて考えさせられました。私にもいつか、目の前のご老人のように一日一日と死が迫ってくる日が必ずやってくるのです。‘死に至る病’とはこのことでしょうか。・・・死を自覚しない愚か者。
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<br /> 個人的に思うに、自分の一生を‘死にきる’ためにはやはり、自分という存在を常に考えることではないでしょうか。思い込むということではなくて、‘自分自身を知る’ということです。偉そうな言葉ですが。
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<br /> 自分という存在が造った壁と闘いながら、目の前の現実にもがきながら。何とも、人間って哀しい存在ですね・・・
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死亡率100%、今日は死への一日目。カウントダウンは始まっている。
<br />そんなことあまり考えていませんでした。
<br />本当にどんなに文明は進んでも人間は下等生物すらつくりだせない。
<br />命を作り出せない。そしてその命は限りあるもの。
<br />それはどんな人にでも訪れるもの。
<br />その事を認識すれば死への恐怖から開放され、変な宗教にかぶれたりしないかもしれない。
<br />(宗教は悪とは思わないが、死への恐怖に漬け込むのはどうかと思う)
<br />いろいろな意味で考え方が変った一冊。
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