ブリヂストンに入社した著者がF1のタイヤで世界を極めるまでのお話で,非常にエキサイティングです.F1などのレースにおいては,エンジンやチーム,ドライバーはいつも注目されるのですが,タイヤがこれほどレースの行方を左右するものとは知りませんでした.
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<br />また,F1で世界制覇をするまでにはいろいろとご苦労はあったのだと思いますが,その点はあまり前面には出さず,エンジニアとしての生き甲斐として語られています.会社の強力なバックアップがあって,フェラーリなどの世界一のチームと組んで,とことん究極のタイヤを追い求めるというのは,エンジニア冥利に尽き,とてもうらやましいく思いました.
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<br />F1では,各レースのために4日ほどサーキットで過ごすことになるようなのですが,その様子が詳細に示されています.「レースタイヤを作っている人たちはこんな仕事をしているんだ」とF1レースに対する興味が一層まします.
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<br />レースファンの方は必読でしょう.
もちろんモータースポーツ、タイヤエンジニアリングについて突っ込んだ記述はあるのですが、新書という形態を意識されたか、F1マニア向けという感じはなくモータースポーツ最前線について(一般向けに)極めてわかりやすく書かれていると思いました。
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<br />最近の地上波F1中継、某新規参入チームを「ジャパンパワー」連呼で盛んに持ち上げて番組を盛り上げようとしていますが、トップ争いというかブービー争いすらできないチームにフォーカスされてもF1を観たいファンは白けるだけ。そんな番組を見るにつけ、BSの「偉業」はある意味、不当に低く評価されているように思います。
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<br />浜島さんの筆致はあくまで控えめで終始「兜の緒を締めて」るんですが、うーん、締めすぎなんじゃないですか?謙虚、謙虚すぎる。そういう意味では本書のような啓蒙書が読まれてBSの功績が再評価されればそれは日本人としてF1ファンとして喜ばしいことです。
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「新書」はかたい文体で内容も難解というイメージがあったのですが、本書はとても読みやすかったです。一見地味なタイヤの話ですが、その奥深さ、現在のF1でタイヤ性能がいかに重要かがよく分かりました。BS・フェラーリにとって、散々な出来となった今シーズンですが、この本を書き終えた時点でまさか、今期このようなシーズンを送るとは筆者自身思ってもみなかっただろう。TV中継で映し出される浜島さんの表情も常に険しいものだった。新レギュレーションでまたタイヤ交換が復活しそうな来シーズン再びBSが復活してくれる事を期待しています。