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大奥の奥 ( 鈴木 由紀子 )

たいそう読みやすい「大奥」入門書ではある。 <br />しかし残念ながら、筆者の歴史感覚に疑問を感じた。 <br />一例を挙げれば、39頁や148頁などに徳川家光が衆道を好んだことに関連して、「男色にふける悪癖」といった表記が見られる。だが、当時の日本社会に於いて衆道を愛好するのは、男性として当然の振る舞いであった程度のことは、歴史上の常識であり、何人たりとも男色好みを「悪癖」だなどと考えるような人間は−−−とくに武家の間では−−−居なかったはずである。 <br />また、現代社会にあっても、大凡まっとうな理性の持ち主で、男性同士の性愛を「悪癖」だなどと断じる人間は、(少なくとも「先進国」では)存在しないことであろう。

数年前からTVドラマなどで関心が高まってきた大奥に関する概説書と言うか、うんちく本です。全く江戸時代の歴史に詳しくなくても読めます。ただ、項目は時系列順になっていないので、その点は取っつきにくいかも知れません。また、春日局に対しての評価が辛いので、大河ドラマやTVの「大奥」で彼女に対するイメージが固まってしまっている人はやめた方がいい本かも知れません。 <br />巻末に一応参考文献がまとまって載っていますので、大奥を学問的な目で見たい人には入門書として向いていると感じました。

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