ウェブ進化論が面白かったため、続編(?)にあたる本書にも手を出した。
<br />作家という全く門外漢の人間とも噛み合った話が出来てしまうのが梅田氏の凄さなのだろうか。
<br />ウェブ進化論では、ITの最先端の状況をここまで専門用語を使わずに説明出来てしまう状況は確かに素晴らしいのだが、同時に単純化し過ぎているんじゃないか?という危惧が生まれた。自分と同様に実際にテクノロジーの最先端の中身を知らない人間は、あの本を読んだだけでは
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<br />「近いうちにどこまでが達成可能で、どこからがまだ夢物語でしかないのか」
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<br />が分からないのでは無いだろうか。
<br />そこで、ウェブ進化論に感化された平均的PCユーザーの代表としての平野氏が感動をそのままに伝道者と質疑応答をしてくれる。すると、拍子抜けするぐらい、現実的なITのキャパシティーを伝えてくれる。前作を読んで感じたような突然世の中が変わる感じというのは、そう簡単には起きない様だ。
「ウェブ進化論」の梅田望夫さんと、小説家の平野啓一郎さんの、ウェブをテーマにした対談。
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<br />「社会がよりよき方向に向かうために、個は何が出来るか、何をすべきか」
<br />と考える平野さんと、
<br />「社会変化とは否応もなく巨大であるゆえ、変化は不可避との前提で、個はいかにサバイバルすべきか」
<br />と考える梅田さん。
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<br />さらに平野さんは、
<br />ウェブの世界でいろんな欲求が充足されてしまうと、リアルな社会をより良い方向へ変化させようと思う人がいなくなるのではないか、
<br />と心配しているようである。
<br />一方梅田さんは、
<br />その辺のことにはある程度楽観している感じがする。
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<br />私に関しては、まだ今のところは楽観でいいのではないかと思う。
<br />私は、ネットに長くつながるようになってから、以前よりもものを考えるようになったと思うし、
<br />本を読む量も増えた。
<br />昔は、選挙というものにはほぼ絶対に行かなかったが、ネットをやるようになったここ数年は、だいたい行く。
<br />選挙の大切さが、なぜかネットをやってわかった気がするのだな。
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<br />それから、
<br />平野さんはウェブの世界をいまだに「仮装現実」と考えているような気がするが、
<br />梅田さんは、ウェブの世界も含めて現実、と捕らえているように思う。
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<br />この考えかたは、梅田さんのほうが新しい感じがするので好きだった。
<br />「仮想現実」みたいな話は、例えば、マトリックスとか攻殻機動隊とか、そういうので散々扱われたテーマだから、ちょっと飽きたし。
<br />もしかして「仮想現実」という言葉は、既に死後になりつつあるんじゃないだろうかとも思う。
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<br />それにしても、何かと考えたくなるテーマが満載の本だと思う。
『ウェブ進化論』の梅田望夫氏と『日蝕』の平野啓一郎がインターネットの今と未来を語った対談集。
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<br />はてなダイアリーの狙い、ネット時代の人脈活用、検索に引っかからない語=空いているスペース、情報がフローするネット時代の本のメリット、グーグル社員のスターウォーズ好きなど、興味深い話が読めて満足。そのほとんどが梅田氏の発言で、平野氏の意見は当たり前すぎて素通りしてしまう。
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<br />この分野で圧倒的なデータを持つ梅田氏に対して、平野氏は30歳以下の世代の感覚をぶつけ、その正誤を確かめているような印象を受けた。
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<br />自分と同じ志向性をもった人が集まりやすい「島宇宙」についてはそこまで実感がわかなかったが、頭の中の記憶(教養)と外部記憶(調べられる情報)のすみわけがインターネットの検索、とりわけ検索の精度向上で変わりつつあるというところに深く共感。
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<br />私自身、頭は使っているのに記憶力だけ減退している気がするのはネットのせいか(年のせいかも)。覚えてなくてもネットで調べられるという油断はある。