エメラルドはサラダ油で着色するいうが含浸は着色ではない。エメラルドは含浸しなければ商品価値が無いのだから、著者が何を問題視しているのか理解できない。コランダムの加熱処理も当然必要なことである。
<br /> 顧客を満足させる仕事こそが社会的に存在意義のある仕事である。しかるに宝石の処理は顧客を満足させるためである。したがって宝石の処理は、それが許容範囲内のものであるかぎり、消費者自身のためである。私はそのように信じている。
<br /> 著者は宝石業界の人であるのにこの業界があたかも悪の巣窟であるような書き方をして業界全体のイメージを悪くしており、同じ宝石業者として非常に腹立たしい。悪い業者の告発がこの本の意図であるのなら、コランダムの通常の加熱処理を書き立てて何になるのか。表面拡散やベリリウムによる処理、意図的な鉛ガラス充填等を問題にすべきではないのか。そしてこの本が主に一般消費者向けであることを考えれば、エンドユーザーの啓蒙にこそ、さらに多くのページを割くべきであると思う。
普通のジュエリー本とはちょっと視点が違えてあるのでおもしろい。ジュエリー本は大抵、ダイヤの相場がどうとか、安く買う方法がどうの、という内容だがこの本はそういったジュエリーの値段には一切焦点をあてず、ジュエリーを所有することのすばらしさを語っている。同時にジュエリーを購入するときの女性の心理をパターン分けしていて、それぞれのパターンで人生論を語っているところが気に入った。わたしにも当てはまるところが有り、なるほどと気恥ずかしくなった。