楽譜の内容そのものはブージー＆ホークス社のリプリントであり、その点では海外版と同一です。もともとブージー社が版権を持っており、全音がライセンスを受けてこの楽譜を国内販売していたのです。しかしブージー社自身が日本へ楽譜を輸出することになったため、全音版が廃刊になってしまったのです。全音からラフマニノフの楽譜が消えて長くたちましたが、２００３年以降ラフマニノフの著作権・版権が切れたことにより、ようやく復刊されることになりました。<br>この本の素晴らしさは、矢代先生の書いた解説にあります。手の小さな日本人がこの曲を弾くのはとても難しく、そのためにはどうしたらよいか。さまざまな練習法が譜例つきで提案されているのをはじめ、曲調に影響しないフレーズの改変アイディアまで、実に詳細に記されています。音大生レベルの方にはロマン派協奏曲の勉強としていきなりこの曲にチャレンジする人もいるようですが、ラフマニノフを自習するのは本当に大変なことです。そういう自習派の方は、ぜひこの楽譜を参考にしていただきたいと思います。