精神科ならではの諸問題がある。たとえば、診断。精神科では、患者さんについて治療者がつむぐ物語の、最後に題名を付けるかのように、治療が終結してからやっと診断名が確定することもありうる。当然、薬物療法もまた、この疾患にはこの薬と簡潔なアルゴリズムがない、らしい(私は専門家ではないので)。
<br />なかなかわかってもらえない、わりきれそうでわりきれない、この独特さ。医師は患者のなにをどうわかるのかを丹念に論考しており、精神科医療はパロールの世界で行われている営為であることを再確認する良書。ネガティブ精神疾患や嗜薬など、現状の問題も率直に語られている。
<br />症例検討会の評価も興味深かった。円環構造の提唱に構造主義らしさを感じる。場の相対化は重要な条件であるが、さしあたって仮に想定することもないと足がかりができないわけで、その辺りのバランス感覚が、経験に裏打ちされた直観と共に、臨床家の実力となっていくのだろう。
<br />新書として、精神科医療の専門家ではない人口にも膾炙するよう意図されているが、多少精神科の用語や文化を知る人ではないと読みづらいかもしれない。DSM信奉者やevidence至上主義の方には是非とも一考してもらいたい。
むかし、先生に治療を受けていた者ですが、
<br />はっきりいえることは、先生は他に例を見ない名医だということです。
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<br />20代の友人ふたりも、先生にかかっていますが、同じ意見です。
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<br />このような先生が何を考え、治療にあたってこられたのか、
<br />興味が持てないわけがありません。
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<br />一気に読みました。
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<br />受けた治療の意味が今更ながら、よく理解できました。
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<br />この本で、治療の予習ができていればもっとよかった(笑)
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<br />先生の言動には、ほんとに徹頭徹尾理由があるのです。
私は精神科医で、専門書・非専門書問わず、あらゆるタイプの本を読む。
<br />かなり多読な方だといっていいだろう。
<br />この書評でも話題になる神田橋・中井両先生についても、当然のことながらほとんど目を通している。
<br />その私が確信する。
<br />この本は、それら大家のまねではない、オリジナリティ溢れるまさに本物であることを。
<br />俊英である著者であるが、かなり若いため、ねたみからか誹謗中傷を受けやすい。
<br />学術論文が何だというのか。
<br />このような根拠にない批評をみると、腹立ちを通り越して、悲しくなり、哀れみすら感じてしまう。
<br />(実際、熊木医師のかつての論文を目にしたことがある。
<br />この本の内容に遜色のない、大変立派なものであった。
<br />最も、熊木医師はこのような門外漢の中傷などに目もくれぬであろうが)