史実と等身大の西太后と、著者の率直な「見解」を明確に区分し、実に読み口爽やかだと思いました。また、この人の後継者(じゅん親王)のセレクト(本人は未だ生きるつもりでいたのでしょうね、多分)が現代中国に並々ならぬ足枷を課しているように思えてなりません。
権力者ではあったけど、なんとも人間くさい人だったということがよく分かりました。
<br />男性の権力者は、自分の力量を試すとか、天下を取りたいとかいう時代。
<br />贅沢に幸せに暮らしたいということを求めた西太后。
<br />なんとも、人間っぽいですよね。
<br />しかも、歴史上の人物でありながら、写真が残っているほど近世の人であったことに、改めて自分の認識不足を感じました。
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<br />悪女と評されているけれど、それを判断するのは、もう一度彼女のことを知ってからでもいいと思います。
<br />本書内で出てきたように、歴史はいつもねつ造されます。
<br />後世の勝者が、自分たちをヒーローに書くためには、そこに『悪者』も必要だったはずです。
<br />西太后だって、人生全てが『悪』であったわけではないんだと知りました。
<br />読めば、また違った見方をできると思います。
50年近くにわたって専横を極めた稀代の悪女というのがこれまでの西太后に対する見方でした。
<br />映画などでも描かれているように、すべてが計算し尽くされた行動によって権力を手中にしていく様は、およそ別世界の物語・・・。
<br />しかし、本書では非常に等身大の人間としての捉え方をしています。
<br />この西太后というキャラクターは、”非常に中国的”なのだそうです。
<br />現在もこの”ミニ西太后”のような人は中国社会の至る所にいるとか。
<br />現代中国とのつきあい方を考える上で、大変参考になる1冊でしょう。
<br />筆者も書いているように死後100年というのは色々な資料が出てきて、それまでの伝説的な見方、価値観が変更される時期なのでしょう。
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