逸身喜一郎「ラテン語のはなし」は、私にとって、言語入門についてのイメージを一新してくれた本である。言語の解説本というと、従来は、殆どが自動的に学習書となってしまっていたが、逸身本はラテン語に関するエッセイ集といった趣で、ラテン語のに親しみが沸き、なんとなく「学習してみようかな」という気にさせられた本である(といいつつ学習してないけど)。本書、小林氏の「ラテン語の世界」も、「ラテン語」自体を言語として学ぶのではなく、「ラテン語について学ぶ」書籍である。逸身氏や小林氏のような、言語への興味を掻き立てる書籍は、どんな言語についても、まずあって欲しいものである。
<br /> 本書は、ラテン語の歴史、俗ラテン語、中世ラテン語の解説に加えて、もっとも非凡なところは、ラテン語が何故現代にいたるまで学術語などとして生き長らえているか、その「メカニズム」を、文法的観点や、文化的観点から詳述している点にあると言える。そうだったのか!と膝を打つ点た多々あった。ギリシア語からの単語の移入についての解説も、「それを知りたかったんだよ」と、痒いところに手が届く記述ぶり。英語には、同じ内容で、異なった言い回しがあるが、その原因が、ラテン語起源(フランス語経由)・ゲルマン語起源であることや、次々とカタカナなどで外来語を吸収する日本語・英語と、中国語・ラテン語の相違など、色々とトレビアに溢れている。
<br /> サンスクリット語についても同様な書籍が出て欲しい強く思いました。
ラテン語において、母音の長短が何故最重要であるかを端的に説明しまた、他言語との違いについて、英語、仏語、中国語などとの比較で、わかり易く説明。
<br />母音長短の区別を守っていないので、西脇順三郎のラテン語詩がエレゲイア詩形の韻律で作られていないことも指摘しており、ラテン語に対する、素人はもちろん専門家(?)でも陥りやすい、誤った知識や先入観を取り除いてくれる好著です。
<br />巻末の参考文献は書名の羅列ではなく、一般でも入手可能な本に的を絞り、かつその本をどう読めば良いのかのコメントも付けられているので、本書を読み終えたら、その中からさらに1冊紐解いてみるのも良いでしょう。
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ちょっと難しいところもありましたが、読んでよかったと思える一冊です。
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<br />私は英語の単語を覚えるときに、英英辞典の語源を参照して記憶の助けにしていました。そしてそれらの語源の多くはラテン語でした。
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<br />この本を読んで、英語とラテン語の違いがよくわかりました。そして、ラテン語を学びたくなりました。
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