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アーロン収容所 ( 会田 雄次 )

 ロシア文学者の内村剛介氏は、シベリアに抑留された体験の持ち主であった。その内村氏が、20年以上前、NHKのテレビ番組の中で、自身のシベリア体験を回想して、(正確な表現は忘れたが)こんな意味の事を言った事が有る。−−シベリアで、私は、自分が、ここ(シベリア)で見た事を記憶して帰れば、その記憶は、日本民族全体の財産に成るに違い無いと思った。−− <br /> 会田雄次氏がイギリス軍の捕虜と成り、ビルマの収容所で辛酸を舐めた時、会田氏が、内村剛介氏と同様の決意を持って、イギリス人達を眺め、彼らの行状を意識して記憶したかどうかは分からない。だが、この本(『アーロン収容所』)を読むと、会田氏のイギリス人観察は、会田氏が、内村氏の場合と同様、或る種の使命感を持って記憶した事柄なのではないか?と言ふ気がしてして来る。 <br /> 深い本である。ビルマの収容所で、歴史家である会田雄次が、一人の捕虜成り、そこで、屈辱的な立場から観察したイギリス人達の行動、心理は、内村剛介氏のシベリア体験と同様、私達日本国民全体の財産である。−−その財産を生かすのも、生かさないのも、私達次第である。−−本書が、英語やロシア語に翻訳される事を期待する。 <br /> <br />(西岡昌紀・内科医/戦後61年目の夏に)

捕虜として受けた屈辱とイギリスへの憎しみがこの本執筆の動機になった、と著者は書いているが、読んでみると「イギリスの残忍さ」についての記述は多くはない。<p>1/3が捕虜に対するイギリス兵の行動についての記述。<br>1/3がインド兵、グルカ兵、現地のビルマ人について。<br>1/3が同僚の日本兵を見た観察日記。<br>といった感じ。<br> イギリス兵についてはその尊敬すべき点やバカっぽい点なども合わせて記述されているので、「イギリスの残酷さを延々と書きつづった本」を期待していると肩すかしを食らうかも。<p> この本のよさは学者である著者が、あくまで冷静に客観的に事実を分析しているところである。国や民族についても善悪ではなく原因と結果を重視して考察しており、思いこみで書かれた左右の政治的な本とは距離がある。<br> ちょっと前までの日本ならこの本は「過激な右翼の本」であったかもしれないが、日本が平和ボケから脱却しつつある現在では万人に勧められる本だ。日本人の良さも悪さもひっくるめて理解できる良書である。

一般招集者の戦争体験記は複数ありますが、本書は戦争が終わり捕虜となった後の話であり、大変ユニークです。<br>この捕虜収容所で行われた事は未だに世間に出ておらず、当時イギリス及びイギリス人がどれほど黄色人種を蔑み、人間と思っていなかったのか、を彼らの言動の端々から感じる事が出来ます。<p>彼らの日本人に対する態度を読むうちに大変な不快感に襲われますが、それをしっかりと乗り越えた日本軍人のバイタリティと柔軟性、発想の豊かさには賞賛を送りたくなります。<br>捕虜監視役のインド人が、何でも器用にこなし、どこからともなく資材を集めてきて、それを加工してなにがしかの製品に仕上げてしまう日本人を、「唖然とした表情で」見つめるさまは、日本人の持って生まれた優秀さを表していて、ホッとさせられます。<p>戦地での戦いだけではなく、武器を持たない戦争があったことを知り、大変驚くと共に、感銘を受けました。

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