第二次世界大戦で日本は太平洋を戦場にアメリカと死闘を繰り広げた。
<br />そしてミッドウェーを機に形勢は逆転し、日本軍は敗走を続け終戦を迎えた。
<br />何故、日本軍は戦闘に敗北したのか、そしてそもそも勝てるはずのない戦を何故始めたのか?
<br />
<br />この書ではノモンハン事件・ミッドウェー作戦・ガダルカナル作戦・インパール作戦・レイテ海戦・沖縄戦を題材に日本軍の失敗についての事例研究と日本軍の組織における失敗に繋がった組織的要素を分析したものである。
<br />
<br />日本軍の組織における失敗の本質は現代の日本の組織にも生きている。
<br />失敗の教訓が生かされなかったのか、日本人の本質に根ざすところもあるからだろうか。
<br />これまで日本では失敗については語らない、挽回の余地を与えることを美風と考える風潮があった。挽回の余地を与えるのはよいが、何故失敗したか、どうすれば失敗を回避できるかといった思考に無縁であったことは失敗の再生産に繋がっているのではないか。
<br />日本軍は過去の遺物ではない。そこには現代の日本人にも繋がる要素が数多くある。
あまりにも大きすぎる犠牲。そもそも200万人もの犠牲は必然的な結果であるのか。
<br />この本を読んで、もっと防げたはずだと感じた。
<br />日本では多くの意見を取り入れすぎて当初の目的が薄れてしまったり、政策の実行がおくれてしまうことが多い。
<br />例えば、テロ国家を監視するために偵察衛星を打ち上げるのはいいが解像度がいまいちだったり、人権擁護だとか何とかいって反日的な勢力に対する対応があやふやになったり、いまいちこの国に日本の財産を守る気持ちがあるのか怪しくなってくる。今も昔も変わんないなぁ〜とこの本を読んで思いました。
<br />
<br />あと、失敗の要因として学習棄却や知識の淘汰ができなかったこと、環境の変化に対応できなかったことなどが上げられている。この本の出版は1984年ですが、このようなコンセプトが記載されていて驚きでした。今はやりの戦略系コンサルが書いた仮説思考なんとか本よりもずっと説得力があります。
名著ですね。私は4年前に買い今でも読み返しています。戦記物としての読みができる上、使われている資料が十分な吟味をされたものであるのがよくわかるからです。しかし、本文中のアナリシスを読んでも、これは今後の戦略戦術という軍事分野での応用が期待できるのであって、多くの方がおっしゃる、ビジネスモデルへの転用まで可能とは、私は思いません。もし応用が利くならば、「〜の戦いからはーが分かった」ではなく「人間とはいかなるときも〜なんだな」ということでしょう。大仰に無理筋で引っ張る必要はありません。
<br /> 因みに私が一番気に入っている点。よくこの作者たちは、何万・何十万の命が露のように消え果てた戦いを、こんなにも感情を込めずに書けるなあ、ということ。ドライにしても、仕事とはここまで感情を封殺するのかと、恐れいりやの鬼子母神でありました。