末期医療のバイブル的存在と言うことだが、唯一絶対の神を信仰する欧米人と森羅万象に神が宿ると考える日本人では、死に対する反応はかなり異なるのではないかと言う気がする。いろいろ参考にはなるので読んで損はないとは思うが、日本の末期医療においてこの本を絶対視するのは問題があるように感じた。
生きて生活する我々の世界にとって、“死”とは忌むべきもの、直視したくないもの、
<br />全ての消滅に過ぎないもの‥という固定観念は根強く存在しています。
<br />ロス医師は1965(S40)から末期患者へのインタビュー・セミナーをされたという事ですが、
<br />現在においても“死”は人目につかないところへ避けられ、目を向けず、縁起の悪いものと
<br />されています。しかもそれが、心身を治療すべき医療現場においてでさえ、
<br />“死=失敗作品”として歴然と認識されているように思えてなりません。
<br /> 1965年当時という随分前の時代であること、そこが日本とは違う価値観を持つアメリカ
<br />であるということ、抜粋されたインタビューはかなり“理性的”な人であること、
<br />彼等は皆、幼い頃から“キリスト教”の教育を施されていること、そして病院には
<br />当たり前に“牧師”が居るということ等‥2006年の日本に住み、特に信仰も無く、
<br />また別に理性的でもないフツーの私たちが、果たしてこれらのインタビューをどの様に
<br />受け入れるのか‥きっと、読む人の感性によって左右されるのでしょうね。
<br /> 私はこの本を読むのにエネルギーを費やしました。何か胃の辺りが調子悪くなって‥
<br />無意識に、自分も患者になって行く様な気分になってしまうからかも知れません。
<br />でも、生きている我々にとって“死”から逃避することは不可能です。ですから
<br />必要以上に避けたり、逆に恐れ過ぎる必要はないのではないか?‥と感じさせられました。
<br />特に若い方々には一読して頂きたいと思う一冊です。
この本は筆者が約二百人にわたる死が間近に迫った末期患者へのインタビュー内容についてと、その末期患者たちにおこる死の直前のさまざまな心境を克明に記した作品です。我々人間に必ず訪れる死について、そして死ぬ瞬間にどういった心境や環境にいたいかを深く考えさせられました。またこの本では、そのような複雑な心境にある末期患者に対する医者の接し方の参考にもなると思いました。なので僕は、この本を最先端の医療技術だけをひたすら使いこなすことや、ただ人を助けるだけの技術だけを考えている医者や、あるいはそういった医者を目指している人たちに読んでもらいたいと思いました。そういった技術だけでなく医者は患者に対する接し方も学ぶべきだということも考えさせられる作品だと思います。