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最終戦争論 ( 石原 莞爾 )

この人の慧眼は、まさに北と南、あるいは西洋と東洋、その環境下での「人間のできかた」の違いに着目し、 <br />説いている点にあると思います。「戦争論」とは名付けているものの、私は文化人類学的な書だと理解しました。 <br />世界から争いがなぜ絶えぬのか。その理解に、ひとつの指標を与えてくれます。 <br />「天皇バンザイ」的な発言もありますが、それは時節柄のせいでしょう。彼はそんな小さな人物じゃない。 <br />繰り返しますが、戦争論なんて捉えるべきではない、今も人類を導き得る指標だと思います。 <br />めっちゃオススメです。

本書は、まさに大東亜戦争開戦のわずか一年前に出版されたものである<br />そこでは、太平洋を挟んだ日米決戦は数十年以内に起こるであろうから、その日のために日本は経済的、社会体制的、軍事的に準備せよといったことが書かれている<br />しかし現実は日本にそのような猶予を与えることはなかった<br />そして石原ら戦前の社会改革思想家の理想は敗戦と日本人だけでも310万人の死者を生む無惨な結果に終わったと言わざるをえない(彼等の理想は戦後、岸信介らをリーダーとしてある程度実現したが)<br />しかし、本書が全く無意味かというとそうではない<br /><br />一見エキセントリックとも思える第五章の日蓮宗の教義をもふくめ、ここで書かれていることは、戦前の(そして戦後から現代をも含めて)日本の政治指導者たちの行動原理の大きな一部を形成しているのだ<br /><br /><br />そういった意味でも本書は現代日本人必読の書と言えるのかもしれない

石原は日本人には少ないビジョンがある男だと思われる。 <br />そのビジョンは西洋古典、古代ローマの戦術から書き起こし、当時の流行だった統制経済への言及、そして国柱会経由とおもわれる立正安国論がない交ぜになった不思議なもの。八百万の神のすべる日本らしいビジョンと言えば言いすぎか。 <br />だが、語る言葉は非常に力強く歯切れがよい。曖昧模糊とした昭和初期のエリート日本人達の中にあって石原の個性は群を抜いている、読んでいるとキャラクターが迫ってくる感じがする。現代でもこの本が受ける理由は石原の個性によるところが大きいと思う。 <br />「統制」の言葉の意味が少し深まったのも収穫。

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最終戦争論&nbsp;&nbsp;&nbsp;石原莞爾は「満州国」建国の立役者であり、昭和期陸軍の一方の雄であったが、東条英機と対立し、太平洋戦争開戦時には予備役に追いやられていた。本書はその直前、昭和15年5月に行われた講演に若干の追補をしたものである。<br> &nbsp;&nbsp;&nbsp;石原がここで「最終戦争」と言うのは、この次に行われる「決戦戦争」によって、世の中から戦争がなくなる、という意味である。なぜなら、戦争発達が極限に至るため、次に起こる戦争の勝者がトーナメントにたとえれば最終的な勝者となり、兵器の発達によって人類はもうとても戦争をすることはできなくなる、ということだ。これは、核の所有により、局地戦はともかく全世界を巻き込む大戦を事実上不可能に近くしている現状を見れば、正鵠を射ている。<br> &nbsp;&nbsp;&nbsp;しかも、「真の決戦戦争の場合には軍隊などは有利な目標ではなく、最も弱い人々、最も大事な国家の施設が攻撃目標になる」「徹底的な、一発あたると何万人もがペチャンコにやられる大威力のものができねばならない」「破壊兵器は最も新鋭なもの、例えば今日戦争になった次の朝、夜が明けてみると敵国の首都や主要都市は徹底的に破壊されている」などの言葉は、まさにその数年後に起こった原爆投下を予言しているかのようだ。<br> &nbsp;&nbsp;&nbsp;石原は、最終戦争後、必然の結果として「そして世界はひとつになる」と語っている。しかしそれが良くも悪くも実現していない現在、次に起こりうる最終戦争がいったい何をもたらすのか。不穏な世界情勢に無関心ではいられない。(杉本治人)
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