「ペットとしての犬」に焦点が当てられる「しつけ」について書かれた本ではなく「動物としての犬」に焦点が当てられている一冊。<br>その習性などが詳しく記載されており、行動学を知りたい人には必携の書となると思う。<br>また、犬の習性を調べるために狼の研究をする研究者もいるが、本書ではペットとしてではないにしろ、犬の研究のために犬を用いてる点も高評価されるべき点。<p>行動・心理系の書物は数冊目を通したが、もっとも犬のことを客観的に記した一冊であると思う。<br>ただ、あくまで動物としての犬に焦点を当てているため、ペットとしての犬、作業動物としての犬、に関する情報を欲しい人には不十分な内容とも言える。<br>エルクハウンドを用いた研究であるなら、もう少し踏み込んだ内容も記載できるのではないかと思うが…。<br>その点を考慮して星は一つ減らした。
家庭犬という枠ではなく「犬」という種族について書かれた本といっていいと思う。<br>この本はかなり前に書かれたものだが、その時すでに犬に関する商業的な部分への危惧を著わしている。<br>また、子犬の時期がいかに大切か、それも、一般に引渡しの時期とされている2~3ヶ月までの時期がどんなに大切かがわかる。<br>セリにかけられ店頭でさらしものになった犬が問題犬になる傾向が高いといわれるのもこの本を読むとうなづける。
この本は著者が学者だからこその価値があります。<br>飼主が愛犬とどのように向き合うべきか書かれた本は多数世に存在しますが、殆どは犬を良い方向に導く事を前提に活動されている方々が経験を元に著されたものです。<br>これらの著作と本書の大きな違いは、ある意味生体実験と呼んでも良い多くの研究とその成果に基づいた事実を根拠に理論展開している事です。<br>例えば、育成過程や教育課程において、あえてその個体やグループに特定の経験をさせない事で犬の行動にどんな影響が出るのかといった、目の前の飼犬やクライアントの犬を向上させようという枠組みの中では絶対出来ない事から得られた成果を元にしているわけです。<br>これは、一部の奉仕者ではなく人と犬全体に成果を提供する研究者だからこそ可能で、また許される行為です。<br>こうした特別な方法で得た情報から、経験則で語られてきた犬との接し方に合理的な解釈を試みています。<br>一部、我が国の犬に対する接し方愛し方の常識とかけ離れた、欧米ならではの家畜としての犬観が登場し、読み手によってはショッキングに感じる記述があるかもしれませんが、論文調の文章が苦手で無い飼い主は是非お読みいただきたい。<br>犬と接する中で絶えず湧いてくる疑問に、少なからず答えを出してくれるはずです。