ロンメルのドイツ・アフリカ軍団は、マルタ島が頑張って補給線をズタズタにしたために負けた、という説がまかりとおっているようです。本書の著者はまっこうからこれを否定しています。
<br />イタリアの輸送船が無事に到着しても、トリポリ港の荷揚げ能力に制約があった。さらにロンメルがとっとと進撃したためにトリポリからの距離が長くなって、トラック輸送の限界を超えた。そんなことは最初からわかっていたのに、ロンメルはアホや。
<br />トブルクの占領が重要であったかに言われているが、トブルクはそもそもエジプトから飛んでくる英空軍の制空権下にあるため、陸揚げも邪魔されるわ、輸送する途中で船も沈められるわで、重要じゃなかった。つまるところロンメルがアホやった。
<br />著者はばっさり切り捨てる。
<br />もちろん当時・現場でいろいろな情報が錯綜し、ムッソリーニやヒトラーが勝手なことを言う中での判断は、それなりに難しいものがあったでしょうから、単にロンメルがアホや、ではかわいそうかなとも思いますが、論理だてていうと、著者の言うとおりなのでしょうね。
<br />マルタ重要説は誰が言い出したのでしょう??
兵站を本格的に考察した書籍で日本語で読めるものはほとんどありません。
<br />防衛研究所の平間さんは本著のあとがきで、そういう本はこれとあと1冊くらいしかないとおっしゃっています。
<br />そんな数少ない1冊であるこの著が、このたび復刻されました。
<br />大変価値あることと言えます。
<br />著者はイスラエルの大学教授で、兵站の専門家です。
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<br />プロは戦争を兵站から考えます。
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古典的名著の復活もさることながら、この本が中央公論新社から発売された最大のポイントは巻末に付されている石津朋之氏の解説論文である。翻訳の内容そのものは原書房から出版されていたものとまったく変わっておらず、おそらく誤訳であろう文章も散見される。だが石津氏の解説論文はその誤訳を訂正したうえクレフェルトの主張を簡潔に整理、それに加えてクレフェルトのその他の著作を総合して「マーチン・ファン・クレフェルトとその戦争観」という非常に読み応えのある解説を行っている。新書にこの値段は少々高いと思うが、石津氏のこの解説論文だけでもこの値段を払う価値がある。絶対おすすめ、一押しの軍事関連本である。
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