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ダウン・ツ・ヘヴン ( 森 博嗣 )

 キルドレンシリーズ第三弾。時系列的に言えば『ナ・バ・テア』の後で『スカイ・クロラ』の前になると言うことかな。今回の主人公は前作同様クサナギスイト(草薙水素) <br /> <br /> 今回も常に生と死というテーマがつきまとう。地上では生きる意味を見いだせない。命の保証がない空では、いつ死ぬかも分からない。死の形を何度も思い描いたり、雲の果てに天国を夢想するあたり、美化された死へのあこがれというのが所々に垣間見える。それがどこか哲学的で、シュールな感じがするのは口調のせいかな。 <br /> <br /> もう一つのテーマとしては子どもと大人。これもシリーズを通じてだが、大人である甲斐がそばにいるせいか、クサナギの子供じみた感じが目立つような気もする。大人になってから死んでいくしかない。そんな憂鬱を抱えながら。それでも、子どものままでは死ぬことすら出来ないという、葛藤もこめて。無性に生き急いでいる感も漂う本作のクサナギは。今までのシリーズのどの主人公よりも人間的じゃないかと思った。憂鬱、という点では装丁が素晴らしいと言うべきかも。 <br /> <br /> 組織の思惑っていうのは、きっと子どもには余計なものにすぎない。だがそんな風にでもしないと成り立たない社会。いつまでも子どもではいさせてくれない。クサナギの逡巡の日々は、雲の中を漂い続けるような。だからこそ終盤の戦闘シーンで一気に感情が爆発したクサナギを見ることが出来るのだ。この展開の持って行き方は上手いと思った。話としてはというより、クサナギの成長ぶりがうかがえるのはなんとも。そしてそのあとのサプライズも。ずるいんだかなんなんだんだか。 <br /> <br /> 哲学的な要素もクサナギの心理描写にもりこまれているので、それほど分厚くはないがじっくり堪能して欲しい。空をイメージしながら。なんと言っても一体感がたまらないよね、このシリーズは。過去作も再読したくなってきた。年の瀬に、いい物を読めた、と。

オリジナルは2005年6月25日リリース。『スカイ・クロラ』シリーズの第三弾。氏のWEB日記によれば『スカイ・クロラ』シリーズはあと1冊でるらしい。 <br />ここに至るとまるで言葉が弾丸のようだ。詩的な言霊が映像付きで連続発射されている感じ。凄い表現力に感嘆である。読めば読むほど迷宮に入り込み、クサナギ・スイトとカンナミってどういう関係なのだろう、って思っている森ファンがたくさんいるだろう。謎が謎を呼んでるな。(●^o^●) <br />森作品は、まずキャラクターありきだ。何体かの魅力的な要素を持ったキャラクターを適度に配置、そして当然予想される化学変化を映像化し、それを文章化するという感じがする。その辺がふつうの作家とだいぶ違う。言ってみればそれは、2次元で小説を書くのと3次元で小説を書くのとの違いだ。森博嗣のキャラクターは皆、立ち上がり動き回る。その中でも草薙水素は『純』に光っていてステキだ。(●^o^●)

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