NHK「こころの時代」の連続講座「心の秘密を解く」を書籍化したもの。
<br /> 皆さんこれで唯識がわかったんでしょうかねえ。私はさっぱりわかりませんでしたよ。確かに唯識がどういう思想かを知識的に理解することはできましょう。しかし、実感として、自分の深層意識(阿頼耶識)がこの全宇宙を作り出しているなどという途方もないことを本当に「理解」、あるいは「納得」できますか?それは簡単なことではないはずです。ですから昔から「唯識三年、倶舎八年」などといったんです。簡単にわかった気になるのは禁物です。
<br /> しかし、確かに入門書としてはよくこなれています。いま出ている中では一番いいと思います。唯識の難しさがどこにあるかがはっきりします。
龍樹による空・中観論の完成を受けて、仏教の言わば「深層心理学」として弥勒、無著、世親により確立された唯識思想。「西遊記」でおなじみの玄奘三蔵により中国に将来され、日本に渡り興福寺、元興寺、薬師寺に法相宗として受用された。唯識思想は、従来の仏教の分析である六識(眼識、耳識、鼻識、舌識、身識、意識)に加え、深層にはたらく自我執着心である末那識と、一切を生み出す可能性を有した根本の心である阿頼耶識の二識を加えて、人間の精神活動が八識からなるとする理論である。末那識と阿頼耶識は、古代インド伝統の瞑想・解脱法であるヨーガの修練から発見された。本書は、難解極まりないとされる唯識思想をわかりやすい解説と豊富な図式で読者を飽きさせずに理解に導く。仏教の中心理論である唯識を知るまたとない良書である。
私がよんだ唯識の入門書のなかで一番わかりやすい。記述自体もわかりやすいが、30近くある図やキーワードを太字にしたりするなどそのほかにも唯識をわかりやすくするための著者の工夫が感じられる。