議論にもスポーツと同じようにルールがある。そのルールの主役は「主張」「根拠」「論拠」。特に普段耳慣れない「論拠」についての説明は、なるほど、と感心した。そして面白かったのが「やはり」とは何だの分析。著者は次のように述べる。
<br />
<br />「議論における論拠について自分自身も気がついていないし、論拠を形成している過程についてもよく分からないときに、自分と相手がともに、『論証の必要性がない』と認め合える基本原理を暗黙の了解のうちに用意し、自分の主張と根拠の組み合わせの整合性はその暗黙に了解された原理(諸仮定を含む)に立脚すれば了解可能であろう」と発話者が考える場合に「やはり」が用いられるという解釈です。
<br />
<br />途中、まどろっこしいと感じる部分もあったが、実践編での新聞記事の分析では、入門・初級・中級編で学んだことが一気に役立つ快感を味わえて面白かった。
<br />
「議論とはそもそもなんであり、その議論をわかりやすくするためにはどんな予備知識が必要なのか」を解説することを直接的な目的、議論の構造を知り、世の中で行われている議論のまずい点が指摘できるようになること、自分のものの考え方に気付くと言う体験をすることが間接的な目的としている一冊。
<br />「仮定の質問には答えられません」など、タイトルからして興味を持つようなトピックが満載。練習問題やコラムによって知識吸収を助けている。付録には、「わかりやすい議論のためのチェック・ポイント」や「私がおすすめする本」がある。
<br />読んで損はない、安心しておすすめできる一冊。
日々、私たちが何気なくしている会話、何気なく書く文章、耳にする他人の会話、目にする文章…。全てに「議論の構造」が存在していることを念頭に置けば、世界が違って見えてくる。そういうことを教えてくれる本です。「主張」、「根拠」、「論拠」という議論の構造における3大要因を中心に、議論の本質に関する分析を行っていきます。そして、自分たちにも議論の分析ができるのだ、ということを教えてくれます。これを読めば、少なからず日々の生活の中で出会う”議論”や、自分自身の”議論”に注意深くなり、世界の見方が変わると思います。