2006年の収穫はこの作品と”風の影”の2作です。
<br />今まで出会ったことの無いタイプの警察小説で、女性警察官の日常が(我々庶民には非日常なのだが)淡々と描かれている。
<br />あくまで等身大で描かれ、読みなれている推理モノや、ハ−ドボイルド小説とは対極に位置する作品である。
<br />そのため、彼女たちの人生や生活観がストレ−トに読み手に入ってきて、作品に飲み込まれるように没頭してしまう。
<br />元警察官と言う作者による描写はリアリティ−に富んでおり、今まで描かれることの無かった、警官の勤務日常もうかがうことが出来る。
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<br />国内では横山秀夫の警察小説に遠くない位置にあるのかも(誤解を恐れずに書くと)知れませんが、味わいは独特です。
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<br />早く次作が読みたい。
素敵で印象的な一冊。
<br />古典的な警官物を想像すると期待を裏切られる。
<br />ミステリに付き物の、ちょっとした事をあらゆる角度から細かく掘り下げたり
<br />犯罪者を導き出す事を話の主筋として維持する
<br />そんな展開では無いから。
<br />しかし現場経験者ならではの視点はものすごく生きている、そんな警官物。
<br />臭いや音、色といった、
<br />文章で伝える事の難しい事柄が本当に上手く書かれていて兎に角読ませてくれる。
<br />短編との事だが、編どうしの絡みや構成もとてもよく出来てると思う。
<br />訳者に感謝。
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作者自身がそうであったと言う、バトンルージュ市警に席を置く5人の女性制服警官を主人公にする九編の短編集です。
<br />そもそも早川ポケットミステリーの1冊と言うことで、警察小説かなと思いながら読み始めました。確かに、警察を舞台にした小説ですが、作者の精細な筆致は、そうしたジャンルを超越し、女性警官たちの心理を的確に描ききった人間ドラマとして、素晴らしい作品になっていました。
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<br />特に、MWA賞受賞作「傷痕」がいいです。
<br />事件当時はその任になかったが、その後警官になり、改めてその再捜査の判断が委ねられることとなり、主人公の心の傷痕が表に出てくり、それが被害者の傷痕以上のものであるという、なかなか見事なストーリー展開になっています。
<br />もう一つ気に入ったのは、「生きている死者」「わたしがいた場所」の連作です。こちらは、警察官としてミスを犯したことで、死なせず良かった人まで殺してしまった胸の痛みの癒しに至る過程の主人公の気持ちと、関わってくる人々の心の通い合いなど、心理小説といってもいいような内容で、非常に楽しめました。