この短編集の中でも「オラクル」と「ひとりっ子」は数学者としてのイーガンのキャリアがにじみ出た作品です。数学好き、量子論の奇怪さにセンス・オブ・ワンダーを感じる方には非常に楽しめると思います。
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<br />また、「行動原理」「真心」「決断者」「ふたりの距離」は、脳科学に興味のある方には、こんな書き方もあるのだと感嘆する要素でいっぱいです。
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<br />そして「ルミナス」ー数学者とは詩人であると感じさせる傑作です。
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<br />ただ、数学アレルギー、量子論なんてナンセンスという方にはちょっと取っつきが悪いかも。でも、すでに出ている『しあわせの理由』とか『祈りの海』を読んでいただければ、文学としても一級であることを感じてもらえると思います。
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<br />とくに『祈りの海』に収載の「ぼくになることを」ーアイデンティティの問題をつきつめた秀作です。
「唯一の世界の中の唯一の私」という認識がアイデンティティの本質であるなら、量子論を持ち出すことによってそれが揺らぐのは当然のことかもしれません。そんな「アイデンティティに関する不安」と、これに起因する「他者との関係性への渇望そして絶望」がメインテーマではないかと。でも、最後の二編で一筋の光明が見えてきます。
<br />イーガン入門編としては比較的とっつきやすいのでお薦め。超ハードというわけでもなく、むしろ詩情豊かな世界が展開される短編集です。
SFの短篇は好きなので、発売と同時に購入して読んでみました。
<br />結論から言えば、『ディアスポラ』よりは面白かった。
<br />でも読む価値はありません。
<br />相変わらず論文のような単調な文章。どうして理系の作家はこう文章が下手くそなのか。アシモフと似ていますが、アシモフにはユーモアがあるので、まだ救いがあります。
<br />それからもっといただけないのは、人間はからっぽであるというイーガンの考え方。
<br />SFにはロマンを求めているのに、寒々しい読後感しか残りません。
<br />長年SFを読んできて、これがSFの最先端だといわれると、虚しさのみを感じてしまいます。
<br />この本を読んで目がさめました。SFからはもう卒業しようと思います。
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