あのマルドゥック・スクランブル全3巻の続編、というかあの世界のシリーズとしてのマルドゥック・ヴェロシティの評価は非常に辛めで星2つでもいいくらいだと思います。
<br /> 前作が非常に斬新かつ綿密に練られた文体及び構成でぐいぐいと読者を引き込むタイプのエンターテイメント性の高い作品で、主人公の少女の非日常的日常と暗黒世界のフリークスの対比、世界観の設定やウフコックのギミックといったものが非常に全3巻にわたってバランス良く主人公の復讐と絡めて、よく書かれていただけに、贅沢を言いたいのかもしれません。
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<br /> 前作で、近親相姦、未成年虐待や法廷論争、アンダーグラウンドな匂いの犯罪の数々、フリーキーな軍事的/趣味の肉体改造と色々詰め込んでいるのなら、今作では、それをもっとセンセーショナルにスケールアップしたほうが、ファンには分かりやすいとは思うのですが、その作戦で行くならば、肉体改造組の他に、どのキャラクターが近親相姦担当で、どのへんがフリークス担当...というのが、ある程度名前や登場の仕方から想像が付きそうなのは、残念です。
<br /> しかも前作が主人公の生存のためという前向きなテーマだったのにくらべ、今作は主人公(前作の敵役)がマルドウック・スクランブルに至る前に全てを失っていくその経緯という、ダークなもの。今回の主人公は虚無というか死に向かって突っ走るしかないというテーマはもうちょっと丁寧に扱って欲しかったかなと思うのは、わがままなのでしょうか?
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<br /> 今回は、文体はよく言えば実験的、悪く言えば手抜きな印象で、ウブカタ得意の言葉遊びがなんだか煩雑に感じます。構成も、一巻でほとんどの主要キャラクターが登場しているらしい割に、文体のせいで各キャラクターの個性が分かりやすく描かれているとは感じられないため、2巻に期待していいのか、それとももっと文章と構成を練ってくれと苦情を言っていいのかも分かりません。この文体で、英単語や外来語のルビが多いと実力のない翻訳者が訳した海外ものを読まされているみたいなのも減点の要因。ここまでやられると、読んでいて、著者がのたうちまわりながら書いているような痛さがあるような気がして、ストーリーの骨格としてはエンターテイメント性があるのに読んでいて辛い作品と個人的にいうしかありません。
<br /> クレージーな世界観と、各キャラクターごとの綿密なSF的ギミックの割り振り方の対比は面白いと思うんだけど、圧縮進行というか、尋常ならざる速度(ヴェロシティ)で暗黒面に突っ走る感じだけの内容だと...内容如何では二巻目でげんなりしてしまいそうな予感。
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<br /> 以上の事は、マルドゥック・スクランブルの続編としてこの作品を読んだ感想。
<br /> もし、前作を未読ならば、やけにセンセーショナルで、文も荒れている感じだけど、荒唐無稽で面白いSFじゃんと、次巻を素直に待ち望んだ事だと思います。もしそうだったら、星4つくらいの評価だったんじゃないかと。
<br /> だから、間をとって星3つ。
前作とかなり文体が変わっています。
<br /> 韻を踏んだり、ぶつ切りのセンテンスやスラッシュなどの多用などジェイムズ エルロイの影響がかなり見られるように思います。
<br /> 慣れていないと一寸取っつきにくいですがはまるとぐいぐいとのめり込めると思います。エルロイファンの方は買いでしょう。
ええと、本文と同じ書体でタイトル書いてみました。
<br />マルドゥック・スクランブルの正当な続編ですが、文体がガラリと変わっています。別の雑誌連載小説と同じ文体なので冲方氏なりの軌跡はあるのだろうと思いますが、一見してとっつきにくいという印象は否めないと思います。手抜きに見えるのが最大の欠点です。
<br />このとっつきにくい文章、読み進んでいけば気にならないし、特殊な文法で韻を踏むなどのなかなか心躍る仕掛けもあるのですが、やはり初めて見たときは読む気が削がれると思います。
<br />正直、この文体は『欠点』としか思えません。
<br />私はマルドゥック・スクランブルが素晴らしすぎたから、その勢いのままに読み進んで、滑走路から飛び立つようにいつのまにか没頭してしまったのですが。
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<br />ストーリーはかなりハードですが、SFの要素と異能者バトルもの(山田風太郎みたいな感じ)がミックスされていて文句無しです。
<br />この作品を読む前に、前作であるマルドゥック・スクランブルは読んでおいた方がいいと思います。
<br />そして、マルドゥック・スクランブルの総毛立つほどの感動に襲われた方は、誰がなんと言おうと『次回作が読みたい』という欲求が抑え切れないでしょうし、あまりおもしろくないと感じた方も(いるとは思えませんが!)それぞれの感性で決めればいいでしょう。
<br />よって、私からはただ一言だけ最後に言わせて頂きます。
<br />……二巻の発売日が待ち遠しい! 早く読ませてくれぇッ!!!