丁寧に緻密に設定された背景・素材があってその作品に深みが出る、良質な作品となる。それが「マルドゥック・スクランブル」であった。その素材を使った2番煎じ、2番出汁の作品が本作品である。2番出汁を何とかしようとグロさやミステリー仕立て?などを入れてはみたものの、さしておしくもない料理になったという感じ。読み終えた後に、そのまま「マルドゥック・スクランブル」の再読に突入して、もう一度幸福になれること以外の価値を感じなっかった。
スクランブルを価値の創成と位置付けるならば
<br />ヴェロシティは価値の失墜かもしれない。
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<br />前作に比べ、ハードボイルドな要素が多分に加味され、
<br />ミステリ小説としてもなかなか読ませてくれる今作品。
<br />過去に犯したボイルドの罪と罰。その浮かぶ事のない淵から救いだしたウフコック。
<br />友情と一括りには出来ないパートナーシップがボイルドを虚無へと加速させる。
<br />平易に言えば、仲間を助ける為に、自らが悪になるというありがちなテーマであるが、
<br />読み終えてから再びスクランブルを読むと、ボイルドのウフコックに対する想いは、やはり悲しく、切ない。
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<br />※文体について
<br />/(スラッシュ)等、初めは読みにくいのは確かです。
<br />ただ、読み手の脳内に情報がバンバン打ち込まれていく感覚は気持ちいいし、
<br />何よりボイルドの端的、客観的かつ淡白な視点が体現されていると思います。
まずは総評から
<br />これは極長の外伝と極短の続編を組み合わせた作品であり
<br />マルドゥックシリーズとしては"条件付き"の満点
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<br />設定は大雑把に見えて緻密、特に主役たる陽気な09メンバーに潜み込む狂気と、敵集団「カトル・カール」が見せる狂気の中に底付くロジカルな面はキャラに厚みを与えている
<br />展開も二巻末から続く流れは正にヴェロシティの名に恥じず、そのスピード感に乗じて一気に読めた
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<br />文体はこの巻になれば特に気にならなかった、少々風変わりであるもの全編波乱あり、ロマンスもあり、決着もきちんとありでシリーズとしての完成度は高い
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<br />問題点はシリーズ故か作品として独立していない事
<br />一段の決着は見せたものの、サイドストーリーではない本当の続編無しには消化できない程伏線を張っている
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<br />という訳で続編を出すなら満点、出さないなら最後に未消化感を与えた作品という事で四つ星を、伏線を見ると前者に見えるので当面の評価は五つ星で