なかなか面白い。「不可能」に思えるような仕事をどう「可能」に変えて、こなしていくか。その工夫が面白い。上司のミランダの言うことは確かにとんでもないことばかりだし、ひどいのだけれど。でも、誇張されている部分はあっても、ハードに仕事していたら、誰しもぶつかるであろう悩みや葛藤も、丁寧に描かれている。家族や友人や恋人との関係も心の動きも、こまやかに描かれていていい。さらに、ファッションやコスメについても、華やかに描きこまれていてとても興味深いし、ゴージャスな気分も味わえていい。
<br />映画も見たが、原作の面白いところや描くべきエピソードををすべてカットしたようなものでつまらなかったので、どうせなら原作を読んだほうがいい。そのほうが、ヒロインも周りの人物も生き生きと魅力的だから。テンポもよくて、決してだらだらした展開などではないから。
<br />映画では、ミランダのキャラクターを完全に変えてしまってるし、ヒロインはどうみても浅はかな女性だし、ヒロインの恋人も、ヒロインを口説こうとする男性も、まるで魅力のかけらもないし。だから、映画とはこの原作は切り離して別物、と思ったほうがいいでしょう。
映画はまだ見てません。評判もよいようですが、小説も面白いですよ。
<br />求めすぎるとなんだか違う、と思うかもしれませんし、
<br />アメリカの小説だなあ・・・・と感じたので、いかにも翻訳モノという感じはしますが
<br />難しいところは何もないので単純にサクサク読めるし、ぐいぐい読んじゃえます。
<br />自分の世界とはかけ離れて違う部分だらけだと感じましたが
<br />要は前向きな主人公とこんなのありえない、そんな上司のストーリーです。
<br />ブランド名も実名なので、あれこれ想像しつつ結構楽しめます。
<br />途中までコメディかと思ったくらいでしたが、上下巻を通してよむと、結構深くなってきます。
<br />最後に私が思ったのは
<br />やっぱり誰も見てないと思っても、見てるヒトは見てるんだなあ・・・ということと、
<br />自分は騙せない、ということ・・・・。
<br />最後まで読んできっとすがすがしい気持ちになりました!
ブラウン大学を卒業したばかりのAndrea Sachsの夢は、雑誌The New Yorkerの記者となること。そのための布石として、「百万人の女の子が死んでも欲しがる」仕事、トップファッション誌Runwayの編集長Miranda Priestlyの秘書として働き始めるが・・・。
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<br />本書の悪役Miranda Priestlyは、1988年より現在までアメリカ版Vogue誌の編集長としてファッション界に絶大な影響力を揮ってきたAnna Wintourをベースにしたと言われています。Wintour氏の秘書を実際に勤めた作者が、ファッション雑誌業界の異常な常識を新鮮な眼で批判していきます。それは時におかしく、時に痛々しく、ときに憤りを感じさせ、読者を引き込む力があります。大なり小なり、ファッション業界の中身は本書に書かれている通りだと思うので、その道のキャリアを考えている人にはお勧めです。
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<br />本書では、悪役として描写されている編集長ですが、ある意味彼女の徹底力には頭が下がります。こだわりをなくすことは、死に等しい、そんなふうにも思いました。そりゃ行き過ぎでしょう、と確かに感じる部分もあるのですが、逆にそこまで徹底すればこそ、今の地位があるようにも思います。冷徹な悪魔、と切り捨てるのは簡単ですが、逆にそれによって培われた多くのものにも眼をやる必要があるように思いました。
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<br />小説としては、とても読みやすいし、ところどころピリッとスパイスも効かせてあって、良く書けているのですが、構成にメリハリがなく、やや平板な印象を受けました。映画化されていますが、映画のほうが、ストーリーにまとまりがあり、またしっかりした構成となっており、(細部がかなり変わっていて、換骨奪胎という感もありますが)エンターテイメントとしては良くできています。筆者にとっては初の小説ということなので、今後に期待です。
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