科学は、不確定な現象から「普遍的なシナリオ」を抽出・固定していく性質をもつ。一方で、個人個人が見ている現実は、あらゆる面において普遍化・固定化を寄せ付けない唯一無二のシナリオを持つ。
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<br />その点において、個人の見ている世界が「正常か異常か」を定量しようとする「科学的な」アプローチには、おのずと限界と矛盾が生じてくる。そもそも「正常と異常」という概念そのものが、意外に曖昧で脆いものなのではないか…
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<br />そんなことを、本当に深く考えさせられる。
<br />一気に引き込まれ、頁をめくり続けた。読み終わって気づいてみると、自分の世界の見方、現実の見方、人間の見方を、根本から問い直すきっかけとなった本だった。
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<br />本気でお薦めです!
この本読むと、何が異常で何が正常なのかわからなくなるし、幸福とは、何かと、考えざるを、得ない。大いなる、問題提起の書。
~ 表題の”火星の人類学者”は最終章に登場する自閉症の動物学者の自己を表現した言葉です。サックス氏は単に世界的にもめずらしい驚異の症例を紹介したのではなく、理解しようとして最大限の努力をし、愛情を持って接したことがわかりました。また健常な人たちが、色がわかったら、ものが見えたら、障害が消えたらどんなにすばらしいだろうと考えていること~~が、必ずしもその人の大きな喜びとはならないことも知りました。脳神経科医の書いた本ですので少し難しさもありますが、巻頭では本書に登場する人たちの作品がカラーで紹介されていて理解の手助けとなると思います。~