「コチニール」という真紅を生み出す染料で、ヨーロッパと中南米を貫いています。赤色と影響を与え合った政治、経済、科学、流行色などの歴史が国境やジャンルを問わず描かれています。
<br />スペイン人が中南米に進出し、現地で使われていたコチニールをヨーロッパに持ち込み初めたのが4世紀以上前。スペイン、イギリス、フランス、他ヨーロッパ諸国、メキシコをはじめとする中南米の人々が、様々な立場で赤色と関わっていたという、長い長い道のりが現在まで続いていています。
<br />読んでいて面白かったのは、ユニークな科学者や植物学者達が活躍する中盤、「コチニールは植物か?虫か?」の顕微鏡開発合戦や、コチニール奪取の苦難苦闘のあたり。また後半、遂にコチニールがスペイン領以外に持ち出されてからの生産競争、合成染料開発による大打撃もスリリングでした(逆に言うと、前半のヨーロッパ政治史や染料の歴史は、ちょっとつらかった)。
<br />翻訳書とは思えないほど、読みやすかったです。ただ、もっと写真や地図、年表があると良かったですね。今まで、大西洋が左右に割れている地図ばかり見てきたけれど、今回しみじみと地図帳でヨーロッパとアメリカの位置関係を確認しました。訳者あとがきに著者のHPが紹介されていて、最初に教えて欲しかった。英語ですが、コチニールの赤色が写真で見られます。
<br />作者は、修士論文のために、チョコレートのヨーロッパ伝来について調査していた時、積み荷の記録に必ず「グラナ(コチニールのこと)」という言葉があるのに気付いたそうです。後にこの本を書いたわけですが、作者の曾祖父、祖父が染色職人だったこと、家族の協力を得てこの本を書いたことを思うと、なかなか運命的な血の通った物語だと思います。
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「赤」っていう色について、どんな印象がありますか?
<br />血の色、口紅、ほてった頬? コカ・コーラ、キットカットの箱、それとも映画祭のレッド・カーペット?
<br />そんな「赤」が歴史を動かしていたなんて知ったら、少し興味が湧きませんか?
<br />この本は、完璧な「赤」を求めた歴史を描いた作品。
<br />もうね、読んでいるうちに、「赤」をめぐる冒険にどんどん引き込まれること請け合いですよ! 少しでも興味を持ったなら、ぜひ読むことをお勧めします。
歴史こぼれ話をはさみつつ、赤色が実は歴史を動かしていた!
<br />という驚きの事実をアステカ帝国の時代にまで遡り検証していく。
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<br />なぜ、「赤」が歴史のキーワードになるのか?
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<br />冒険、喜劇、陰謀など歴史の魅力が凝縮した作品。おもしろい。
<br />ただしちょっと高いので、星4つで。
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